〔レポート〕廃校を利用した自転車と地域社会の新しい関係「たちかわ創造舎」訪問。

地元地域と自転車の新しい関係「たちかわ創造舎」訪問

 立川競輪場で行われた東京都自転車競技連盟主催「子供トラック自転車スクール」におじゃました際、廃校になった旧多摩川小学校を利用して生まれた新たなスポーツ・文化施設「たちかわ創造舎」(立川市)を見学させて頂きました。この施設は現在複数のNPO法人で運営しており、その中でも「サイクル・ステーション事業」がこの廃校を利用した新たな地域コミュニティのメインとなっています。

今回は、そんな「地域社会と自転車の新しい関係」をレポートして行きたいと思っています。長野県内にも現在廃校となった学校の再利用に苦慮している地域がありますが、自転車に限らずこうした「遺産」と「地域」そして「新しいなにか」を今後生み出していく一つのヒントになればと思います。

 

 

たちかわ創造舎とは?

 2004年に廃校となった「立川市立多摩川小学校」の校舎や体育館などを利用した文化創造の為の活動拠点と銘打たれ。現在では下記の四つの事業を中心に複数のNPO法人が「たちかわ創造舎」を運営しています。

 

〔たちかわ創造舎主な4つの事業〕

 インキュベーション・センター事業

  • シェア・オフィス、イベント・スペース、倉庫を廉価で提供
  • シェア・オフィス・メンバーと協力してワークショップやイベントの共催
  • 多摩エリアへの情報発信やネットワークの構築をサポート

 

 フィルムコミッション事業

  • 長期・短期を問わない撮影スペースの貸出し。屋上、校庭、体育館も空いていれば撮影可能
  • 学校や教室を使った実戦的な映像製作ワークショップの開催
  • 立川市の歴史を記録する映像のアーカイブや16ミリフィルムの上映会の実施

 

 サイクル・ステーション事業

  • スポーツサイクルを安全に楽しむためのレベル別のサイクリング・スクールやワークショップの開催
  • 多摩川を走るサイクリストの立ち寄りスポットとして休憩スペースや情報の提供、ルールやマナーの周知
  • 自転車で自然の中を走ったり、レースを楽しんだりするイベントの共催

 

 コミュニティ・デザイン事業

  • 芸術文化やサイクルスポーツで街を活性化する事業を企画・製作、たちかわ創造舎内外にて発信
  • 行政や公共団体、商業施設の文化事業に協力して、イベントやプロジェクトを企画・運営
  • 学校や教育機関を連携して、各世代に向けた「学び」の機会と「体験」の場を創出

 

これを見ると、長野県の各地域でも官民入乱れて似たようなことをやっている訳で特段の目新しさは無い。特にフィルムコミッションは松本市・上田市辺りは非常に力をいれいるし文化的分野で特段の遅れをとっているとは思えない。ただ長野に圧倒的に無いものが「サイクルステーション事業」。

遅ればせながら、日本でもインバウンドブームにあやかりの自転車を用いた「観光地づくり」や「地域活性」を始めた地域が多々ある。最も有名なのが「しまなみ海道」な訳だが、最近は山陰・関西近くはお隣の群馬等も力を入れ始めて我らが長野県も小さいながらもその兆しが見える。では、「たちかわ創造舎」のサイクリング事業の何が他と違って特徴的か?次の章に記したい…

 

たちかわ創造舎の入り口には在りし日の学校の下駄箱が来る人を迎えてくれる。

 

 

サイクル・ステーション事業の魅力

 

〔主なサイクルステーション事業〕

 ・ここを起点に立川・多摩川サイクリングが出来るよう様々な設備(シャワー・駐輪場・ショップ)が整備されている。

 ・初心者から上級者まで老若男女問わず、オンロードからオフロードまで様々な自転車講習会やイベントが行われる。

 ・ここを本拠地とした自転車クラブチームの運営

 

昔使われていた教室では様々な様々なワークショップ等が行われ誰もが参加・施設利用出来る

 

短時間の訪問だったが、「たちかわ創造舎のサイクリング事業」に携わる方々とお話をさせて頂いてここが他の地域自治体とは全く違った所を記したい

先ずは「自転車=観光サイクリングロード整備」とか「レース・イベント誘致」「自転車を使って流行りの外国人インバウンド客を呼び込もう」と云う一時のブームに乗った視点で設立運営されていないということ。

誰もが乗る自転車と云うツールを通じて地域で大小の様々なイベントを行い、その盛り上がりを持って身近な所から人を取り込んで行こうとしていること。地域の外から単に人を呼ぶのでは無く、先ず地元の人々を呼び込み内から外へ向けて発信して行くということ。

人々が集まれるコミュニティを地道な活動を通じて地に足をつけて取り組んでいることに大きな可能性と、この自治体の本気度が伺える。今はまだ小さくても長く続けばこれはかならず地域に欠かせない場所になるし、この地域で自転車が文化になり得る可能性を大いに秘めている。その一例が先日お伝えした「たちかわサイクルサッカークラブ」だろう。同クラブはこの地域をホームにして少しづつ小中学生の選手を増やし始め、ゆっくりながらも少しずつ自転車が地域に根付き始めているのを感じさせられた。

 

たちかわサイクルサッカークラブの小中学生選手達。ここから巣立った選手が将来の日本を担う!

 

またここをホームにするのは「たちかわサイクルサッカークラブ」だけでなく、Jプロツアーのロードレースチーム東京ヴェントスも本拠地としており、この施設の中でサイクルゲート多摩川と云う施設を運営している。この施設は単なるオフィスと云うだけでなく、自転車ショップやカフェも運営しており結果としてここにくればサイクリストにとって必要なモノや設備がほぼ揃っている。そう遠く無い将来ここからヴェントスを目指す選手が現れ、この場所が西東京のサイクリストのメッカになるような気がする…

 

東京ヴェントスが運営する「サイクルゲート多摩川」ここのモクレンと云うコーヒーはオススメです!

 

このように「たちかわ創造舎」は自転車だけでなく、様々なコミュニティとそこに集う志ある人達の集合体のような場所であり、さもすれば少し堅苦しいような雰囲気が漂いそうな感じだが!不思議とこの学校の雰囲気が敷居の高さをさげてくれ、授業が無い放課後の学校のようにゆったりとした時間の流れが人を選ばず来る人を温かく迎えてくれる。(この日は校庭が一望できるフリースペースで地元のお母さんたちが子供達を連れ飲み物ご持参でママ友会をしていた)

 

長野県と自転車業界の未来

 

 最後にここを訪れた個人的な感想を書きます…。

 一番思ったことは「長野県でこうした自転車施設を作れるだろうか?」と云うこと。東京とは人口も地域性も違うから同じものを作るのは現状すぐには難しい…。立川市の場合は多摩川沿いと云うサイクリングに適した土地と、情熱と確かなビジョンを持った人材にも恵まれている。

県内の廃校を幾つか見ればなかなか適した場所は無いし、長野県の場合面積が広い為に人材を集中させるのも難しい。ただ将来的にこうした自転車コミュニティが発達しそうな地域も確かにある。何時か立川市のような自転車を中心とした地域コミュニティが長野にも出来ることを願いつつ

もし今日のこの記事が誰かのヒントになって、何かモノなす人が県自転車界や自治体から出て来てくれれば幸いです。

 

自転車だけで無く地域で様々な役割を果たしているこの施設、本当にノスタルジックな不思議な空間でした。

 

「自転車を取り巻く世界」

「地域社会」「未来の世界」

色々な世界があって、色々なコミュニティがある。

でも、我関せず個々バラバラに考えるより

色々な人が垣根を越えて手を携えれば

案外、将来は今よりもずっと面白いものが

生まれているのかも知れない。

 

 たちかわ創造舎よりイベントのお知らせ】

 サイクルサッカー関東春季社会人リーグ

  6月30日(土)10時より たちかわ創造舎体育館(無料)

 タンデム自転車の安全な乗り方教室

  7月28日(土)9:30より たちかわ創造舎校庭(1500円)

 たまライド 多摩川 (60K・100K)

  6月24日(日) 7月29日(日) 8月26日(日)たちかわ創造舎

  申込はスポーツエントリーにて

 

 

 

 

関連記事


関連LINK

たちかわ創造舎(公式HP)

東京都自転車競技連盟自転車普及委員会(公式HP)

たちかわサイクルサッカークラブ(公式HP)

東京ヴェントス(公式HP)

サイクルゲート多摩川(東京ヴェントスHPより)