〔トレーニング方法〕初心者から上級者まで自転車に乗る全ての人に「JCFスポーツサイクル基礎スキル」

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

JCFスポーツサイクル基礎スキルについて

 昨年、日本自転車競技連盟(JCF)はスポーツ自転車に乗る全ての人を対象にした基礎技術の教科書『スポーツサイクル基礎スキル』を発行した。これにより全国共通でスポーツバイクに乗る際に「教えるべきこと」「学ぶべきこと」を明確化。スポーツサイクリスト全体の技術向上を目的としたカリキュラムを構築して指導の統一を目指して行く事となった。

長野県では先日の2 Days Race in木島平村で高体連の顧問・先生を対象とした安全講習を行った。また、レースを終えた高校生選手に対しても希望者に対してこのカリキュラムを行った。サイクリング長野ドットコムでも一般のスポーツ自転車を楽しむ人全てを対象に明日から簡単に出来る基礎メソッドをお伝えします。

 加えて県内の中高生・大学生アスリートの皆さんへ、3月東京で行われた自転車競技フォーラムの際に元スピードスケート日本代表でJCF三宮恵利子理事より強くなるためのメッセージを頂いたのでここで合わせて披露します。

 

 目次

 自転車に乗る前に

 先日の講習で行った基礎スキル

 ・直線スラローム

 ・一本橋

 三宮恵利子理事より強くなる為のメッセージ

 

自転車に乗る前に…

 

《セルフ車検》

 え!?そこから??と驚かれた方も多いと思いますが、自転車に乗る前は必ず自分の自転車を確認して下さい。本当に笑ってしまうかも知れませんが、選手レベルでもこれが出来ていない選手が本当に多いです!県内の大会でもペダルが自転車から外れた!何てのは良くある話しで、昨年の某大会ではペダルどころかクランクから外れたなんて笑えない事例も多々あります…。一緒に走る人の安全を守る為にも最低限の機材確認はして下さい!

 

・ウエアの確認(ズボンがチェーンに絡まない服装ですか?UV対策出来てますか?グローブ奨励!)

・ヘルメット(ストラップが耳を三角に囲むように、あご紐は指二本余裕がある位に…)

・タイヤの空気圧(必ず適正値に入れて下さいね)

・ブレーキ(目安は前ブレーキをかけて後輪が上がる、後ブレーキで後輪が引きずられる、前後で後輪が上がる)

・異音を確認(ハンドルを数cm持上げ落とす、サドルを持上げ後輪を数㎝上げて落としてみて下さい)

 

 

《体調確認》

 自転車に乗る前に体調確認は必須です。睡眠はとれましたか?食事はしましたか??当たり前のことですが非常に大切なことです。2days木島平の講習の際にコーチが言っていましたが、コーチが海外にいた時にその車連には全てのライダーに向けて強くなる為のスローガンがあったそうです。それは…

 

 Eat.(食べて) Sleep.(寝て) Ride.(乗って)  Repeat.(繰り返す)

 

恐らくこれは強くなる為の最もシンプルにして究極の方法だと思います。そして、海外のその車連では子供から高齢者まで全てのライダーにこのスローガンが徹底されていました。自転車に乗る前に、強くなる為に必ず自分に問うてみてください。睡眠は?食事は??体調は???と…

 

JCFが作成した初の統一基礎カリキュラム「スポーツサイクル基礎スキル」

 

先日の講習で行った基礎スキルについて

 

《直線スラローム》

 【目的】

  ・ハンドルに頼らない操作が出来るようになる

  ・ラインを意識する

 

 【用意するもの】

  パイロン10個(ペットボトルで可能)     

 

 【具体的な方法】

  スタート・フィニッシュに2本のパイロンを置きゲートを作る。

  中間6本のパイロンを2.5m間隔で置いてその間を先ずはしっかりと走る。

  

赤いパイロンがスタートゲート、黄色のパイロンの間をスラロームして行く

 【中級編】

  ・慣れてきたら出来るだけ早く通過するようにする

  ・ブレーキと加速を多用してスピードをコントロールできるようになる。

  ・自転車を倒し込むことを体感させる。

 

 【上級編】 

  ・コースを6秒未満でクリアできるようにする。

  ・パイロンの間をきれいに速く走れるようにする。 

 

 【ワンポイントアドバイス】

  ・個人的にはこの練習は「自身の感覚を磨く練習」だと思います。

   だから先ずはやってみて、どうやったら速く正確に走れるようになるか

   考えながら工夫してみてください。 もし答えがあるならば

   何百回とやった末に自分自身が気づくものだと思っています。

 

 

《真っすぐ走る・一本橋》

 【目的】

  ・ハンドルへの加重を抑える

  ・重心やポジションを意識

  ・ペダリングを意識して狭いコースを真っすぐ走る

 

 【用意するもの】

  一本橋(無ければチョークで書く)パイロン4つ(無ければペットボトル)

 

 【具体的な方法】

  一本橋(幅20㎝、長さ4m、高さ3㎝程度が望ましい)を用意してその上を走る。

  一本橋が用意できない場合はテープやチョークでコースを書く。

 

 【具体的な走り方】

  一本橋には真っすぐに侵入出来るようにややスピードを出す。

  バランスがとりにくい人はそのままペダルを水平にバランスを保ち惰性で走り抜ける。

都車連では難易度を上げてゴールご直ぐにターンさせる。

 【中級編】橋上でのスピードコントロール

  ・一本橋の上で軽くブレーキをかけ遅くなったら再びペダルを踏みスピードを上げる。

  ・ブレーキをかけながらペダルを踏むことでスピードコントロール

  ・左右にぶれないようなコントロールをするため目線は3mほど先を見ると良い。

 

 【上級編】出来るだけゆっくり一本橋を渡る

  ・前輪が一本橋のどの位置かを確認して、どのようにバランスを保つか体感する。

  ・5mの一本橋で10秒以上キープするように頑張る。(方手離しをしてもいい)

  ・ゆっくりすすめるようになったらスタンディングを課題に含ませる。

 

 【注意点】

  一本橋から落ちてしまったら戻らない!落ちたそのまま直進する。

  戻ろうとすると段差があるので落車する恐れがある。

 

 【ワンポイントアドバイス】

   先日の木島平で自分も挑戦しましたが、これは本当に難しいです。

   社会人の選手達もやっていましたが、完璧にこなせた選手は殆どいません。

   恐らくこの練習にゴールは無いと思います。野球で云えばキャッチボール。

   サッカーならパス練習と同じで、常に精度を上げて行く終わりの無い練習です。

   どうか毎日の練習に必ず取り入れてみて下さい。

   きっと  自分の走りが変わると思います。

 

   

以上をぜひ日々の練習に取り入れてみて下さい。この練習は本当に基礎の基礎です!野球で云えばキャッチボールとバント練習のようなものです。「相手の胸にしっかりボールを投げる」この精度が上がれば必然的にエラー率が下がります。自転車もしっかりと「真っすぐ走る・しっかり曲がる」この精度を上げれば必然的に落車率(事故の危険性)が下がると思います。この著者で東京都車連自転車学校の松本敦校長は言います…

 

 簡単なことが目をつぶっても出来るまで反復する!

 

また、この本の最後の頁にある挿絵を描いた小島コーチも…

 

 簡単に習得出来たことは、簡単に忘れてしまう。

 だからこそ反復練習が必要!

 

とおっしゃられていました。毎日自転車にのって少しでも、イメージトレーニングだけでもしておけば安全性が大きく変わると思うので是非この二つの練習を日々取り入れてみて下さい。最後に一つだけプロ野球に少し関わってた人間から一言…。プロ野球選手はキャッチボールがとんでも無く上手い!基礎中の基礎を自分の周りでは見たことが無い位に高い精度で出来るが故のプロだと一番最初に思い知らされました。だから決してこの基礎を疎かにはしないで下さい。

 

「JCFスポーツサイクル基礎スキル」著者の松本敦都車連普及副委員長

 

選手に向けて… JCF三宮恵利子理事のメッセージ

 ここからは競技者に向けてになりますが、3月に行われた「学連シンポジウム」で三宮恵利子JCF理事の選手へのメッセージを紹介します。先ず三宮理事は選手にこう語りかけました…

 

  選手の皆さん、夢を持っていますか?

  その夢に日付をつけていますか??

 

三宮理事はご存知の通りスピードスケートのソルトレイク・長野五輪日本代表。長く国内外の一線で活躍されたスケーターです。そのシンポジウムではご自身の五輪までの道のりと選手生活を集まったコーチ・選手達に話して下さいました。非常に興味深いお話しだったのでここに記したいと思います。

理事は自らを「逆算方式」の選手と言っていました。これは…

 

1.先ず目標を設定する

2.   その為に今シーズン何をするか?

3.   その為に今日何をするか??

4. その為にどうするか???を決める

5. 最終的な大きな目標は嫌でも見える場所に貼る。  

 

そんなことをしていたそうです。五輪があるならばその日を設定して、金メダルを取るにはどうしたらいいか?勝つためにはどうしたらいいか??を逆算して考え行動して行く…。そうした模索の日々の中で理事は毎日「日記」を付けていたそうです。今日一日の振り返りや感想を書き、時にはコーチに言われて「うるさい!」と思ったことなども細かく書いたそうです。全ては自分のデータを蓄積して行くこと。そして、一番大切なことは自分のデーターを自分で知ることが不可欠だとおっしゃられました。また、目標を設定する上で大切なエピソードとして…

 

理事自身、自分は決して飛びぬけて強い選手では無く、最初の目標は市の小学校大会で優勝だったそうです。その後は中学・インターハイとその時々の大きな目標やその段階に合った目標をつくりNo1を目指したそうです。そして、その場に集まった選手に改めて自分の「目標はありますか?」と聞いていました。また心に残ったのが…

 

勝つためには負けること…

 

勝つぶんだけ負ける。実際に平昌で活躍した小平選手も多くの負けを経験して今があるそうです。大切なことは…

 

監督やコーチからやらされるトレーニングから、自らやるトレーニングが大切

だからこそ、夢に日付をつけて下さい…

 

と選手にメッセージを送りました。残念ながら当日は録音が出来なかった為に自分の回想になってしまいますが是非、長野県内のサイクリストで目指すものがある人の参考になれば幸いです。

 

 

今日は少し文章が多くなってしまいましたが

志ある誰かの考える糧になれば幸いです。

JCFのスポーツサイクル基礎スキルの教本ですが

何冊か仕入れて来たので見たい方は声をかけて下さい。

そして、各高校の部活では練習前に是非この練習と

三宮理事の「練習日誌」を取り入れてみてください。

最後に指導者を志す方、ぜひ機会があればJCF指導者講習にご参加下さい。

 

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東京都自転車競技連盟普及委員会

日本学生自転車連盟