〔緊急企画〕全サイクリスト必読!国立スポーツ科学センター「競技者のための暑熱対策ガイドブック」

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

読み物紹介「JISS競技者のための暑熱対策ガイドブック

 本当に暑い日が続いてますが信州サイクリストの皆様いかがお過ごしでしょうか?ここの所様々な地域で異常な暑さが続いてます。そこで今日のサイクリング長野は、先日7月1日にJISS国立スポーツ科学センターが刊行した「競技者のための暑熱対策ガイドブック」を紹介します。 

これはスポーツ科学センターがアスリートに向けて刊行したかなり専門的なガイドブックですが、競技者は勿論のこと指導者・チームのマネージャーはもちろん審判・競技役員など、全てのサイクリストに読んで欲しいガイドブックです。内容について細かいことを言い出すとキリが無いのですが、どこかのチームであった実例で例えば…

 

選  手: 明日のレース経口補水液が欲しいんだけど…

スタッフ: 山の中にそんなもんあるかっ!

 

そんなケースでも大丈夫!? このガイドにはそんな経口補水液の簡易的な作り方までバッチリかいてあります。また「糖度何%で何℃のドリンクが吸収が一番早いか?」など再度確認しておきたい情報も満載です。他にも脱水状態・蓄熱状態とパフォーマンス低下の関係や身体を冷やすことで得られるパフォーマンス・集中力の向上などを科学的データに基づいて解説されています。

少し話しがそれましたが、身体を動かす全ての人に読んで欲しいと思います。無料で閲覧・ダウンロードできますので下記のLINKから読んで見て下さい。

 

◇競技者のための暑熱対策ガイドブック

 上巻(1頁~23頁)

 下巻(24頁~43頁)

 

◇熱中症を防ごう!(日本体育協会HP)あわせて読みたい

 こちら

 

ナショナルトレセンでは一般向けにも様々なセミナーをやってるので興味のあるものは是非受講してみて下さい。

 

熱中症!注意すべきはスタッフや観戦者

 熱中症や脱水症状についてですが、むしろ炎天下で作業をするチームスタッフや審判員・競技役員。そして、観戦者こそ気をつけてもらいたいと思います。特に炎天下での記録作業やフィニッシュジャッジなど集中力を有するスタッフは要注意です。

 

《自分の熱中症経験 -甲子園でぶっ倒れた4つの失敗- 》

 

甲子園の開会式は本当に過酷で吹奏楽・合唱部の生徒がバタバタと倒れる… TVは放映しないけど(笑)

 

 一昨年の甲子園で長野県代表は開会式あとの第一試合に当たりました。朝4半の始発に乗りたまたまスーパーで買った無糖のアイスコーヒーを2ℓと水を4ℓを持ち込みました。今思うとこの「無糖コーヒー」が最初の大きな失敗でした。

その後、開会式を観て長野県の試合です。こちらはスコアを付けているので試合終了まで席を立てません。それでも長い日は一日4試合殆ど席を立たず座っている状態です。慣れているから大丈夫!と思っていましたがここにも失敗が潜んでいました。

高校野球は前・後半に分かれていて、5回の裏が終わるとグラウンド整備があり試合中唯一のハーフタイムがあります。自分の身体に異変が起き始めていたのはこの辺りでした!気温がガンガン上がり始め、既にコーヒー2ℓは終わっていました。持ってきた水は既にお湯に変わっていてそれを飲み始めていました(おそらくその水では身体を冷やすことが出来なかった)。その時に何だか皮膚の表面がピリピリとし始めたのです。ここが三つ目の失敗。それでも体力があるので特に気にも止めませんでした。

体調がいよいよおかしくなったのは6回を過ぎてから目がチカチカしてきて、とにかく眠く無いのにあくびが出始める。それでもなまじ体力があるから頑張れてしまうんです!しかし、さらに熱中症と脱水症状は進んで行きます。ふと、居眠りのような「舟を漕ぐ」状況に陥り始めたのです。これはもう眠気では無いんですね。意識が吹っ飛ぼうとしている訳です!そして、最後決定的なことで「吐き気がする」のです。これはヤバい!マジでやばい!!と思うと今度は心臓が勝手にドキドキして視界がぐるぐる回って立てないし、酸素が上手く吸えないような息苦しさ…。おまけに足が正座のあとのようにしびれた感じで立てないんです。

 

その日の恐怖のスコアブック!6回から徐々に字が薄くなり8回以降はもう意識も文字も薄くとぎれとぎれ…

 

結局、何とか氷入りの飲み物を飲んで、頭から氷水をかけて強引に意識を戻して、試合終了後はクーラーのある部屋で暫く立てませんでした…。勿論翌日の夜まで胃が固形物を受け付けず、ぶっ倒れて初めてこれが熱射病で自分にも起こり得るのだと知りました。

 

《四つの失敗》

 この症例をJIISのガイドブックと照らし合わせると、幾つかの深刻な間違いに気づきます。

 

①午前中飲んでいた無糖コーヒーと熱耐性

 一つの大きな失敗はコーヒーに含まれるカフェインと考えています。過去に「カフェインがもたらすスプリント時の筋持続力効果」と言う論文が話題になりました。また、ダイエット効果を期待して朝練前にコーヒーを飲むサイクリストも多いと思いますが、ことこの時期に関してはカフェインはその利尿作用が示すとおり、副交感神経を刺激しやすく大量の発汗にも繋がると思います。個人的にはこれが熱中症の引き金になったと考え現在は汗を大量にかくようなエンデュランストレーニングには避けるようにしています。(もしかしたら微糖であればまだ吸収が変わったかも知れませんが…)

また、ガイドによると暑さになれるまでに身体はある程度の時間を要する(熱耐性)とあります。突然、信州から灼熱の甲子園球場に行った。それもガイドを読めば大きな要因の一つだったと思います。実際にこの日以降はどんな暑い日でも身体が適用出来たので他地域へ行く場合は参考にして下さい。

 

②炎天下で同じ姿勢でい続けるという失敗とエコノミー症候群のリスク

 今思えば、炎天下で座ったままでいるというのは大きな失敗でした。ただでさえ発汗の多い状況で同じ姿勢をとり続けるというのは血液粘度が上がる。あくびをし始めた時に気付くべきでした。その症状は血液がどろどろになりつつあり、身体が酸素を上手く運べない状況。酸欠になり始めていたんだと思います!これは一歩間違えればエコノミー症候群に繋がる本当に危険な間違いでした。

 

③肌がピリピリすると云うサインを見逃す

 医者ではないので確かなことは言えませんが、これはもうJIISガイドブックに照らし合わせれば大量発汗から来るミネラル不足による熱性けいれんの始まりだったと考えます。このサインが出ていると言うことは水分不足・ミネラル不足に陥っていたのだと思います。現在はこうした身体からのサインに敏感に耳を傾けるようにしています。

 

④最終段階の一歩手前… 熱失神寸前。

 身体はことここに置いてもまだ頑張れてしまう。恐らくアスリートの皆さんなら余計にでしょう。目がチカチカしたり、視界が急に狭くなったりする。ここまで来てしまったのは本当に最悪です。もう水分を摂らないとか身体を冷やさないの前に、ここまで身体のサインを軽視しつづけたことが一番の悪です。皆さんは練習中、少しでも体調が悪くなったらくれぐれも無理をしないで下さい。

ならないのに越したことは無いのですが、なってしまったら最低限の状況で食い止められるように、常に身体から送られてくるサインにこの時期は特に耳を傾けて下さい。体力がある人のほうが頑張れてしまうだけ事態を最悪にしてしまいます!! そして、熱中症になる時は多くの場合で幾つかの要因が重なっています。自分の場合はコーヒーが引き金ですが、前夜からウォーターローディングをするとか、しっかり寝る、ミネラルも摂るなど皆さんくれぐれも安全なライドをして下さいね!!そして、観戦者の皆さん!スタッフの皆さんも集中しているときこそ危険です!定期的に水を飲む習慣をつけたり、身体を冷やすグッズを忘れずにして下さいね。

 

先日友人がトゥイッケナム・スタジアムに遠征に行った際ロッカールームにあった「アイスバス」
ラグビーはその激しさ故に熱中症はもちろん、炎天下でのリカバリーや衝撃による毛細血管の出血・筋疲労を抑える。

 

 

体力のある人ほど身体の声に敏感に耳を傾ける!

観戦者・スタッフ・役員も集中している時が落とし穴!

各部活動のマネージャーは選手にしっかり水分を与えて

少しでもヤバい!と思ったら選手が何を言おうとも

ぶっ飛ばしてでも止めさせて下さいね。

熱中症のダメージは後々まで残り、その爪痕が一番深刻です。

とにかくこれから暑い日々が続きます

くれぐれも体調には気を付けて…

 

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関連LINK

国立スポーツ科学センター(公式HP)

日本体育協会(公式HP)