もくじ
東京都自転車競技連盟主催「インストラクター講習会」《前編》
今回は6月9日(日)に行われた東京都車連主催「自転車インストラクター講習会」を見学・取材させて頂きましたので長野県内の自転車関係者・指導者の皆様に御報告致します。既にご存知の通り、昨年から長野県自転車競技連盟では普及と育成を兼ね「美鈴湖自転車学校」を開催しておりますが、その際に参考にさせて頂いた東京都自転車競技連盟(TCF)普及員会が主管する「TCF自転車学校」の指導者指導者講習会ということで、さわりだけの紹介となりますが、県内の自転車指導者の方はもとより、多くの指導者の方の参考になり、新たな交流などが生まれれば幸いです。
また、都車連の貴重な指導者講習会を見学する機会を与えて下さった「都車連普及委員会の皆様」・「東京都」・「東京都体育協会」の皆様に心より厚く御礼を申し上げます。
講習会概要
TCFインストラクター講習会
主催:東京都自転車競技連盟・東京都・東京都体育協会
日 時:2019年6月9日(日)
場 所:東京夢の島マリーナ
内 容:午前-座学講義、午後-実技講習
講 師:比護隆一 東京都自転車競技連盟普及委員長
松本 敦 東京都自転車競技連盟普及副委員長
小林文弥 東京都自転車競技連盟理事
夢の島熱帯植物園の裏にある夢の島マリーナで講義が行われた。
信州から出かけて行くと潮風がひときわ心地よい…
講義内容〈午前の部〉
1.指導者の心構えと基本知識(講師:比護隆一)
◇都車連普及委員会における活動理念の紹介
・スポーツを通じて感動を共に味わおう。
・人と人、心と心の繋がりを大切にしよう。
・1つでもたくさんの笑顔を増やそう。
◇都車連普及委員会の活動方針について
・一人一人の安全を第一に考えよう。
・みんなが楽しめることを考えよう。
・子供達の未来に繋がる種をまこう。
◇指導者の心構えについて
・主役は子供(受講者)たちである。
・指導者はサポート役である。
・本気の指導をこころがける。
・良い所を探して褒める
・感謝の気持ちをたくさん伝える。
・技術を教えるのではなく、チャンスを与える。
・誰のためなのか?を考える。
・スポーツの楽しさと社会の厳しさを教える。
◇指導者として大切なこと
・スポーツには主に三つの種類がある。
「勝つためのスポーツ」「教育の為のスポーツ」「健康の為のスポーツ」
・三つの課題
「自信をつけさせる」「自立させる」「やる気や意欲を引き出す」
・遊びを取り入れ、褒めることの大切さ。
◇効果を高めるための手法
・Full Value Contract
グループ内でどんなことを言っても受け止めてくれるという
安心感や、失敗しても許容されると云う心理的環境を作る
・Challenge by Choice
プログラムに参加するかどうかの選択肢を受講者に与える。
プログラムの難易度も幾つかの選択権を用意することが望ましい。
・Briefing Debriefing
何をこれから行うのか?最初に手順をよく説明すること
終了後は必ず振り返りのディスカッションの時間をとり
その日の体験を全員が言葉にすることで、各自が他者の体験を理解できる 。
講義を行った比護隆一TCF普及委員長
2.救命処置の手順について/救急法と交通安全(講師:比護隆一)
◇救急法の基本〔目的〕
・事故防止について
・正しい応急手当とは…
・悪化の防止
・正しい運搬
・訓練による自信
◇救急法の基本Ⅱ〔留意点〕
・二次災害の防止
・原則として医薬品を使用しない…
・あくまで医師に引き継ぐまでの一時的な応急処置に留めること
・必ず医師の診断を受けさせる
・死亡診断は、医師が行う…
◇自転車に関係するケガの手当て
・頭部損傷
・鎖骨骨折
・擦過傷などの傷の手当
・運搬法
・家族などへの連絡
◇子供の交通事故を防ぐために
・子供の視野の狭さについて
・子供の動体視力
・発育・発達に合わせた運動
・子供の心理と誉める指導
・食生活と突然死について
◇ケーススタディ(参加者ディスカッション)
・子供の心臓を大きくするにはどうしたら良いか?
小学生の間は主に神経系統が発達する
心臓が大きくなるのは10歳~15・16歳までが大きくなる期間とされる。
集中力も心臓の大きさに比例する。
他スポーツとの「心臓の大きさ」「肺の大きさ」「筋線維の型」の比較について
・子供の動体視力を向上させるのにはどうしたらいいか?
スポーツにおける動体視力の優位性と重要性について。
プロ野球選手の動体視力と成績に関する事例等の説明を受けた。
※以上の二点を講師と参加者でデスカッションを行った。
高校生からマスターズの方まで15名が指導者講習会を受講した。
長野県に比べると女性が多かったことが印象に残った。
3.普及委員会の活動と活動時の危険予知(講師:小林文弥)
(1)普及員会の活動紹介
・TCF普及委員会の自転車プログラムの紹介
・自転車学校の開催までの流れ
・自転車学校の実技プログラムの紹介
①自転車のセルフチェック(セルフ車検)
②サドルプッシング(押し歩き)
③直線・8の字スラローム
④1本橋走行など
・最新の指導カリキュラム
・今後のスケジュールについて。
(2)活動時の危険予知(KYT)
・日本スポーツ協会のデータによると自転車は種目別事故率12位。
年代別では【10歳~19歳】が全体の41%、【0歳~9歳】でも16.5%と
全体の半分以上が我々の担当している世代であり
種目・年代も含め、事故は必ずおこるものとして指導する必要性がある。
・KYTとは…
危険(K)を予知(Y)するトレーニング(T)
◇ケーススタディ(参加者ディスカッション)
「ある日のTCF自転車学校」のプログラム・ロケーション・気象条件などから
参加者が危険個所・危険要素を出し合い、それに対する対策等を話し合った。
《条件》
・プログラム内容:ケルメスを開催
・対 象 :小学生~中学生の初心者
・季 節 :7月
・時 刻 :11時
・天候/気象条件 :晴れ 気温28℃ 湿度も高い
・場 所 :大型駐車場(参加者には写真が配られた)
上記の条件でどこに危険性や潜在的リスクがあるか?また、その対策を話し合った。
TCFの取組から危険予知についての講義を行う小林文弥理事。
4.自転車競技における落車のメカニズム(講師:松本敦)
◇落車の科学的メカニズム
・「剛体」と「重心」の関係
・「キャスター角」と「ジャイロ効果」について
◇落車における2つのタイプ
・前方落車:段差や障害物に突っ込むことで前方に回転するような落車
・側方落車:滑りやすい路面等で、車輪がスリップして起きる落車
◇落車の四つの要因と対処方法
・路面の状況変化 :タイヤグリップの変化が生じた際、それを感じ対処できる経験値を高める。
・オーバーペース :予めのスピードコントロールと状況判断を高める。
・スキルの未熟 :基礎運転技術に加え集団での密度や動きを観察する視野の広さ注意力も重要。
・集団落車 :上記の技術に加え、危険な選手を見極め距離を置くことも重要。
◇午後の部で実技講習を行った
・落車疑似体験
・落車回避トレーニングメソッドについて
①他者との接触練習
②コーナーリングの姿勢(リーンウィズ・リーンアウト・リーンイン)
③段差の乗り越え
④溝の対処の仕方
・TCF将来の落車を意識したスキル指導について。
昨年の美鈴湖自転車学校でも講師を務めた松本敦TCF副普及委員長
以上が午前に行われた
座学講習の模様でした。
今回は3名の講師の方の講義を
拝聴することとなりましたが、
どの方も非常に興味深い内容で
今後、長野県でもこうした試みを
取り入れて行きたいと思います。
当初の予定よりだいぶ長くなったので
後半へ続きます…
関連LINK
東京夢の島マリーナ(会場)
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