英連邦のオリンピック!「2018コモンウェルスゲーム」遠征レポート②-トラック競技編-

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コモンウエルスゲーム遠征レポート② ‐トラック競技編その1‐

4月4日から15日まで11日間にわたって行われた英連邦のオリンピック「第21回コモンウェルスゲーム」。今回は大会2日目から全4日間で行われたトラック競技についてのレポートを記載して行きたいと思います。

今回ここに綴りたいのは、競技の結果についてよりも主に「2020年の東京五輪」を見据えて…。また、2027年の長野国体にも繋がればと願いながら、会場で気が付いたことや問題点、などについて書いて行きたいと思います。

このベロドロームには、個人的に強い愛着があるので多少センチメンタルな部分がありますが、それも含めてお楽しみください。

 

 目次

 1.会場となった新ベロドロームの物語

 ⒉新ベロドローム完成、4000席の観客席をどう作る?

 ⒊会場の厳重なセキュリティと場外施設

 ⒋オーストラリア独自のホスピタリティ

 

会場の新ベロドロームの物語〔州サイクリストの10年来の悲願〕

 今大会に使用されたブリスベン市にあるチャンドラー地区にあるベロドローム。実は遡ること15年前に自分は初めて前身の自転車競技場に足を踏み入れました。今思えばそれは運命的な出会いでした。恐らくそこに足を踏み入れていなければ、このサイクリング長野ドットコムも無かったことでしょう。

当時は自分はまだ殆どトラック競技の知識が無く何となく周りに誘われるがまま何となく大会の見学に行った。それが全ての始まりでした…

 

2003年のチャンドラーベロドローム

もうその時点でかなり老朽化が進んでいて、凸凹の路面にボロボロのスタンド。州のサイクリスト達は口々に「新しい板張りのベロドロームが欲しい」と言っている状況。しかし、当時の豪州は3年前のシドニー五輪で新設されたベロの他、メルボルン、確かパースにも新しいベロが誕生し、政治的にもゴールドコースト・ブリスベン地域に新しいベロが出来ること考えられなかった訳です。加えて年々と競技人口が減っていく状況。2005年の頃には本当に叶わぬ望みでした…

 

2005年頃、徐々に小学校低学年の競技人口が減り始めベロ建設は夢のまた夢に思われた。

そんな中で、大きな転機となったのがゴールドコースト市がコモンウエルスゲームの誘致に乗り出し、国際規格の自転車競技場が必要となった。そこで複雑な経緯を経てゴールドコースト市内では無くブリスベン市の老朽化されたチャンドラーに白羽の矢が立った。その後、紆余曲折があって一昨年2016年ついに完成。考えてみれば非常に数奇な運命を辿っての完成となった

 

2016年新設されたアンナ・メアーズベロドローム

今でも地元関係者が新築のベロドロームを誇らしげに自分に見せてくれた日を忘れられない。自分にとっても大きな悲願!自分でも思わず中を見せてもらったその日に長野県自転車関係者に自慢げに写真付きメールを送信したの日のことを今でもはっきり覚えています。

 

 

一方で愛着があった旧競技場に対する強い哀愁も感じた。不可能と思われたベロが10年の時を経て不思議な巡り合わせで完成して目の前にある。もしかしたら、今度は日本のどこかで自分が味わったような感動が生まれることを近い将来期待したい。

 

新ベロ完成!しかし4000席の観客席をどう作る??

 2020年東京でも伊豆ベロドロームの客席数をどうやって増やすのか?と云う命題があるのですが、アンナメアーズベロドロームはどうやって仮設の座席を増やしたのか?平時と大会時の会場の違いを比べながらレポートします。

 

【バック側に仮設スタンドを増設】

2016年新築時に招待された時はバックスタンドは白い常設座席だけ

今大会では白い常設座席の上にグレーの仮設スタンドを設けた。

そもそもアンナメアリーズ・ベロドロームは今回のコモンウエルスゲームが開催されることを前提に建設された。しかしながら、行政にとって自転車のベロを作ると云うのは「大きな箱もの」であることは否めない。そこでコスト削減も考慮して、仮設スタンドの設置を見越してコンコース部分が非常に余裕を持って設計されていた。また平日は殆ど利用されない自転車競技場だが、トラックの下にスポーツジム施設を設けられており、普段は市営のジムとして市民に解放することで近隣住民へ福利厚生の寄与と使用料収入を得ている。

 

【最大収容人数を生んだ仮設バックスタンド】

毎回満員となり観客動員の原動力となったバック側仮設スタンド

不思議と近寄ってみるとそれほど大さを感じなかった。

 スタンドの裏側をみると単管パイプで作られた仮設の施設と云うことが解る

実際スタンド下を歩くとまるで建設現場のような佇まいで上で歩く振動が下に伝わってくる…

 

【座席後ろのコンコースを有効活用】

コンコースは割合に広くとられているが…

少ないながらも仮設スタンドをしっかり作っていた。

 

限られたスペースを目いっぱい使っての大会運営であった為、良く言えば一体感があったが、悪く言えば、観戦者だけで無く「運営スタッフ」「報道スタッフ」等にとっても手狭で窮屈な感じが否めなかった。

 

【通路の狭さがネック】

仮設スタンド裏側の通路はかなり狭くなり日本の場合は災害時等も考慮して安全上かなり不安

構造上どうしても有効活用できない部分もあった。

 

会場の厳重なセキュリティと場内施設。

 会場のあるチャンドラースポーツセンター付近は完全なクローズとなった。日本以上の車社会でありながら一般客の駐車場は一切無く、観客は市街地もしくは近くのショッピングセンターからシャトルバスに乗って会場入りした。因みに今大会のチケットを持っていると全ての公共交通が無料で利用出来た。(後ほど詳しく)

 

長野五輪同様に市街地からまた地域のショッピングセンターが大きな役割を果たした

全ての競技全ての会場で空港並みのセキュリティチェックが行われた。

 

とりわけ厳しかったのが、液体物の持ち込みで飲み物が殆ど持ち込めなかった。一時預かりも無かったので知らずに来た観客が、ボランティアに盛上げられながらセキュリティエリアで一気飲み大会を開催していた。

食べ物も飲み物も持込めないのは、日本のテーマパークでも見かける問題で同様の不満が多く出ていた。その代わりに水筒を持ってくると無料で給水出来る場所が設けられていた。(MTBの際に紹介する)

また、とにかくスポーツセンターを丸々とクローズにしている為に、バス乗り場からも歩く、セキュリティ後からスタジアムまでも歩く…。豪州特有の問題かも知れないが、とにかくスケールが大きすぎて日本の場合はもう少しセキュリティ後の「クリーンエリア」を小さくとって良いのかも知れない。

 

クリーンエリアでは様々な屋台やプロモーションブースがあり賑わいをみせた。

地元ビール会社は大会を記念したデザインのビールを販売していた。

 

物価の高い豪州だけあって、会場内の食事は1500円~1000円程度、ビールも1杯1000円から800円。コーラも600円と高かった。しかし、どの会場でも飲食を利用する客は多かった。因みに今回多くの地元の人間と話す機会があったが、正直会場の食事をほめる声は殆ど聞かれなかった。この辺りは現状の日本と変わらないのだが、昨今NPB(プロ野球)・Jリーグを中心にスタジアムの食事は格段の進化を見せている。2020に向かって日本は会場でどのような価格で飲食を提供し、どの程度の満足度を海外からの観客に提供できるか?は一つの注目でもある。

 

オーストラリア独自の会場ホスピタリティ

 ボランティアについては改めて詳しく書くが、今大会はボランティアのアイディアや権限が非常に強いと感じた。よくよくボランティアの意見が大会運営に反映され、現場の判断が尊重されている印象を受けた。とりわけオーストラリアらしく家族客に対しての施設が充実していて「家族で遊べる施設」「家族で休める施設」が非常に充実していた。

「自転車会場の家族休憩所」この施設はどこの会場にも準備されていた。

どこの会場にもボランティア手書きの案内ボードが用意されていた。

どの会場でも小さな子が家族で遊べるブースが用意されていた。

 

次回は、競技運営とチケット販売、会場で感じたことをお伝えします。

 

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関連LINK

コモンウエルスゲーム2018公式HP(英語)