もくじ
『JISS競技者の為の暑熱対策ガイドブック』【実践編】
いよいよ信州各地の気温も上がり夏シーズンを迎えようとしています。
当サイトでは、一昨年JISS(国立スポーツ科学センター)の
刊行物で【競技者のための暑熱対策ガイドブック】を紹介しましたが
今年はさらにその続編である、暑熱対策ガイドブック「実践編」が発刊されましたので
ご紹介致します。
ダウンロード無料の読み物です!
夏場に野外で自転車に乗る長野県内の全てのサイクリストの皆さんに
ご覧いただければと思いますので、ご一読下さい。
暑熱対策ガイドブック【実践編】
ハイパフォーマンスセンター 目次 はじめに 第一章 運動前運動中の身体冷却法 |
ダウンロードはこちらから(国立科学スポーツセンター)
※前作の「競技者のための暑熱ガイドブック」もダウンロードできます。
《県内自転車競技会場の暑熱対策》
昨年の長野県主催大会トラック競技では、ミスト扇風機を会場に用意して
選手が「涼」をとれるように対策をした。
MTB会場では恒例のアイスバスが各会場に用意され、レース後の選手達が殺到する。
最新の「アイス・スラリー」とは何か?
先日、松本市へBMXとMTBのコースを作りに行った時です。
あまりの暑さでコンビニに行って冷たいものを買おうとしたら
凍った冷たいドリンクのところに見慣れない、商品が置いてありました。
それが…
おっ?新製品のフローズン・ポカリかや??と
その時は思ったのですが、気になって調べてみたら
JISS刊行物の中にアイス・スラリーの有効性が
書いてあったので今回紹介します。
《アイス・スラリーとは》
アイススラリーは、水と微小な氷がシャーベット状に
混ざった氷飲料です 。アイススラリーは低温で流動性が高く、
氷が水に溶ける際に体内の熱を多く吸収することができます。
そのため、アイススラリーの摂取は冷たい飲料の摂取よりも
非常に高い冷却効果を有しており、有用な暑熱対策の一つです。
【JIIS競技者のための暑熱対策ガイドブック実践編より】
夏のMTB白馬大会ではニュートラル・エイドステーションがあり
地元の中学・高校生やボランティアの方が給水を行う。
《どのくらい飲めば身体の中心温度が冷えるのか??》
では、アイススライリーをどの程度摂取すれば身体の
中心温度が冷え、パフォーマンスに有功な値が得られるか?
◆運動前 体重1㎏あたり7.5g(eg:体重60㎏の選手で450g) ◆運動中 体重1㎏あたり1.25g(eg.:体重60㎏の選手で75g)
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以上が、およその摂取基準値であり
運動中の深部体温の上昇を抑制することが出来るそうです。
ただし、この論文を読んでいて気を付けなければならない点!
それはこの摂取はあくまで身体の体温(深部体温)を下げることが目的。
炎天下時の水分補給量とは分けて考える必要があるかと思います。
※実際に、炎天下では脱水症状を起こさないようにもっとこまめな水分補給と
冷たいものでお腹が下る人もいるかと思いますので
練習時に自分の身体と相談しながら最適な摂取量を模索してみて下さい。
アイススラリーの摂取だけでは、炎天下の水分補給は不十分だと思うので
常にこまめな水分補給を心掛けると共に、エイドの際は水を被って身体を冷やすなど
飲むだけで無く身体にかけるなど工夫を心掛けたい。
(写真:補給を行うチーム36隊)
《アイス・スラリーのレシピ》
クリックすると大きくなります。
(参照:競技者のための暑熱対策ガイドブックより)
このガイドブックには、アイス・スラリーの作り方も書いてあります。
流石に、夏場の競技場やコースでは作成するのは難しいかも知れませんが
当日朝、前日夜に用意することは出来るかも知れません。
また、この理論を知っておけば日常生活にも応用できるので是非ご覧ください。
詳しくは、ガイドブックを!
※氷は、より小さなモノのほうが飲み物の温度を短い時間でより冷やすことが出来ます。
従って、補給の際はボトルにより細かいクラッシュアイスを入れて飲料の温度を
下げてあげることも一つのアイディアかと思います。
《アイス・スラリーの注意点》
前筆していますが、冷たいものに対してお腹が弱い選手と云うのは必ずいます。
逆に、アイススラリーを多く摂取できると云うことは、その選手の一つの能力でも
あるかも知れません。日頃の練習から慣れておくこと、どのタイミングで飲むか?
どの程度摂取できるか?摂取した場合の自身の身体の変化も把握しておく必要を
ガイドブックは指摘しています。
その他、最新の冷却方法について。
《アイスベスト》
このガイドブックでは、最近はやりの「アイスベスト」の有効性についても
書かれています。このレポートでは試合前のウォーミングアップで
15分間アイスベストを着用した場合、深部体温が0.7度ほど下がったとの
データーが発表されています。また、アイススラリーとの併用についてや、
アイスベストを着用する際の注意点も書かれています。
昨年の全日本選手権マウンテンバイクでアイスベストを着用し
スタートを待つ松本駿選手(Team SCOTT JAPAN/長野県登録)
《手掌前腕冷却》
レース前にバケツなどに冷水を張り
そこに、掌から手首を沈めて体温を冷やすものです。
これは、「末端を温める」の逆の発想で、末端を冷やすことで
身体全体を冷やすことに似ています。メカニズムについては
ガイドブックが非常に丁寧に書いてありますので是非ご覧ください。
因みに水温は10℃~15℃、深部体温の低下には10分程度が
一つの指針となりますが、これも選手や当日のコンディションに
よっても変わってきますので、何度か試してみることをおススメします。
また両手を同時に行うことによってさらに効果が高まることと
アイスパックを握ることも一定の効果があるそうです。
国立科学スポーツセンターに併設する味の素ナショナルトレーニングセンター(東京西が丘)
最近は研修ではなく、何故かTeam Nagano Tシャツを配達に行ったような…
熱中症の疑いがある場合と応急処置
現場では鍛えられたアスリートでさえも
過度な緊張や、美鈴湖の場合高地であり、空気が薄く
紫外線も非常に強く、その影響と思われる熱中症に似たような
状況になる選手。過度の緊張から、脱水症状のような状況に
陥る選手が少なからずいます。
そうした中で、大会役員やチームサポートスタッフなど
現場で対応が迫られる場面で我々はどうしたら良いか?
熱中症かな?と思った際の対処方法と
万が一の「応急処置」についての動画がありますので
大会関係者・チーム関係者の皆さんは是非ご覧ください。
《熱中症が疑われる場合の対応方法について》
(参照元:Youtube/日本スポーツ協会)
《熱中症予防‐身体冷却法と応急処置》
(参照元:Youtube/日本スポーツ協会)
まとめ
年々、夏場の平均気温が上がって来る中で
スポーツは禁止されています(環境省)
また、市民マラソンの開催の指針として
28℃以上では競技を行ってはいけないとされています。
それでも、多くの競技スポーツがこの温度以上の中で
開催されているのが現状です。そうした中で
現在の暑熱対策のトレンドは、身体表面の冷却だけでなく
身体の中心部の温度をいかに下げるのか?が
課題となっているようです。
改めて、指導者・チームアテンダント・スタッフの皆様には
今日紹介した暑熱対策も一つの考え方として
現場に適した方法でご活用頂ければと思います。
特に健康の為に自転車に乗られている方が
こうした方法を積極的に取り入れて頂き
楽しいライドをして頂けますようお願い致します。
前回の記事で書きましたが、そんなのに絶対ならないと
思っていた自分が、スコアラーしていて倒れました。
もう熱中症は「万が一」ではありません!!
関連LINK
国立スポーツ科学センター(公式HP)
日本スポーツ協会(公式HP)
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