《特別書評》女性サイクリング史「自転車と女たちの世紀」
ここ数日、自転車シーズンを前に非常に忙しく、なかなかホームページの更新が出来ず申し訳ありません。週末の遠征が大雪でキャンセルになって少し余裕が出来ましたが、そんな折、久しぶりに当サイトでもお馴染みバックス事務所の松本敦氏から本の書評を頂きました。
今回ご紹介する本は、イギリス「ガーディアン」紙の
2020年「ブックオブザイヤー」に選ばれ、
日本でも2023年1月より日本語翻訳版が発売された…
自転車と女たちの世紀 -革命は車輪に乗って-
自転車が生まれ、少しずつ世に出回る頃
まだ女性が自転車に乗ることが良しとされない時代に
女性サイクリストたちはどうやって市民権を得て行ったのか?
そんな「女性と自転車」の歴史と物語を描いた本です。
是非、日本自転車メディアの草分け的存在でもある
松本敦氏の書評と共に、ご覧いただければと思います。
自転車と女たちの世紀
【出版社紹介文】
これは自転車の本であり、
これまで語られてこなかった歴史であり、
政治的な抵抗と命がけの冒険の書であり、
誰もが勇気づけられるであろう
ペダルを漕いだ素晴らしい女たちの物語
シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、1940年代、恋人の自転車を借りてパリをサイクリングし、(事故で歯を失っても)その自由さにたちまち惚れ込んだ。レスター出身の工場労働者アリス・ホーキンスは選挙権獲得のためにペダルをこいで闘い、自転車は女性たちを運動に参加させる礎となった。ザハラは自転車に乗り、アフガニスタンの宗教的・文化的タブーに挑戦し、同じように乗ることを他の人に教えた。ボストンに住む24歳のラトビア人移民だったアニー・コプチョフスキーは、1894年に女性として初めて自転車で世界一周を成し遂げた。
多くの女性たちが、自転車に乗れない、乗るべきでないと言われながら、とにかく自転車に乗った。メダルを獲得しようが、女性に投票を呼びかけようが、彼女たちの物語はインスピレーションを与えてくれるだろう。この華やかな祝典の中で、著者は、サイクリングの豊かで多様な歴史の一部である女性たちの素晴らしい物語を描いている。
【出版社HP】
【著者インタビュー】
〔参照元:Youtube/Camcycle〕
特別書評
BOOK紹介 『自転車と女たちの世紀』
『自転車と女たちの世紀』ハナ・ロス著 坂本麻理子訳 Pヴァイン刊 2,700円+税(ISBN978-4-910511-38-2)を読んだ。
――革命は車輪に乗ってーー この単行本のキャッチである。読み甲斐がある力作で、他に類が無い。
著者は自転車レース好きな祖父を持ち、自身も活発に走る女性です。本書は丹念に掘り起こした女性サイクリングの歴史本であり、たくさんのパイオニアたちの伝記でもある。 475ページからなる本書は四部構成。一部は1890年代に沸き起こりすぐ消えた上流階級のサイクリングブームが中心。ハードウエアの歴史にふれ、その高価な自転車を趣味として嗜んだ“ヴィクトリア朝時代”に生きた上流階級人の趣向・価値観を説きおこす。 1890年代半ばまでにアメリカとイギリスのサイクリスト人口の三分の一は上流女性。初期のボーンシェーカー(ミショー型)、ハイホイール(ダルマ型)、セーフティバイシクル(安全型)も最初は高価だったが自転車価格が量産化でこなれてくると、自転車は高尚な趣味というイメージが醸成されていた。とはいえ、上流女性たちは乗らなくなってしまった。なぜ? 詳細は第一部を読んでほしい。そんな自転車趣味の黎明期に革命分子となった女たちがずらり登場。
見出しで紹介すると一部は、「革命」。二部は、「抵抗と反抗」。三部は、「開けた道へ」。四部は、「トラック、ロード、マウンテンーー各種レースの女王たち」。
フェミニストのあなたなら二部と三部が興味深いはず。先進的な女性が社会のしがらみに縛られていた女性たちにサイクリングの手引書を書いて啓蒙したのです。社会的組織を作った女性もいます。1829年に「レディ・サイクリスツ・アソシエーション」(LCA)を発足させたリリアス・キャンベル・ディヴィッドソンは、多くの女性が同性だけで一緒にサイクリングをすることを好む点に気づいてネットワーク作り活動を実らせ、全英各地にローカル・クラブを発足させた。 ロンドンの「モーブレー・ハウス・サイクリング・アソシエーション」(1892年にフローレンス・ハーバートンと自転車好き人道主義者の貴族レディ・イザベラ・サマセットが共同設立)は、クラブで共用する自転車を用意。それは労働者階級女性に向けた取り組みで、希望者はささやかな額を支払えば毎月1週間、2週間と自転車を使えた。メンバーになった女性に、長時間労働で必要としていたリラックスできる時間と楽しみを提供した。分割払いで自転車を買い取れる制度も作った。 他にも、たくさんの女性が女性のために社会に立ち向かいました。また、女性たちを勇気づけてサイクリングに誘った女性もいます。2012年にギネス公認女性初の自転車世界一周152日間を樹立したジュリアナ・バーリングも紹介されてます。 21世紀、自由に自転車に乗るジェンダーとして、オリヴァン・サイコズ・バイシクル・ブリゲード(卵巣のあるサイコたちの自転車旅団)も紹介。有色人種「womxn」のためのサイクリング婦人団体で、黒いバンダナで顔を覆ったサイコズの面々が集団で走る画像は暴走族のようだが、真実はそれとほど遠い。サイコズは「womxn」とともに、性別を越えたバイナリーな「Latinx」=トランスジェンダー女性と有色人種女性も含むのだ。
四部は、女子レースの歴史がまだ新しいことに気づいて驚くでしょう。
UCI(国際自転車競技連合)が女子サイクリング世界記録を初めて認めたのは1955年、20世紀半ばという新しさ! それ以前にもレースで男どもを凌ぐ女子レーサーが何人も紹介されているけれど記録がほとんどない。それでも伝承、新聞や雑誌の記事に凄いエピソードがある、本書には脚注があるのでさらに深く知りたい人には貴重だ。 ここらでまとめよう。ボクにとってコロナ禍初期に感じたマスク着用の社会的圧力は、正直言って恐ろしく重かった。本書を通読して20世紀半ばまで、一般的な女性たちが社会的圧力下でサイクリングを楽しめなかった気分が判ったように思えた。 今でも、家(父)の顔色を窺ったり、他者の目を気にして自由に生きることに消極的な人(男性でも)はいるはずだ。そんな人はぜひ本書をお読みになれば、“自由のマシン”で心身ともに開放されたくなるはずだ。 書評:松本敦 |
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書評:松本敦氏
松本 敦 《東京都自転車競技連盟福委員長/東京都自転車競技連盟理事》 |
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英語版はオーディオブックもあります。
詳しくは上部をクリック。
と云う訳で、今年1月に和訳され
日本でも発売となった本の紹介でした。
ちょっとまだ自分は読めていないのですが…
今回お馴染みの松本さんから書評を頂きました。
女性が自転車に乗るということに
まだまだ偏見や抵抗があった時代
先駆者たちはどうやって
女性サイクリストの地位を獲得して行ったか?
それは、年々と女性競技者が減り続ける
今の日本自転車界においても
多分に女性サイクリストの獲得や
地位向上のヒントを含んでいるものと思われます。
今年の長野県はついに
高校自転車の女子選手がゼロとなります。
また、MTBの女子選手の減少は常に
当サイトが訴え続けていることでもあります。
是非、多くの自転車関係者・スポーツ関係者の
皆さんに手に取って頂ければと思います。
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Hannah Ross(著者:Twitter)
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