〔特集〕サイクリング長野が選ぶ2022年シーズン最も印象に残った信州のレース5選。

〔特集〕サイクリング長野が選ぶ2022年シーズン最も印象に残った信州のレース5選。

 

 今年も残すところあとわずかとなりました。ご存じの通り、12月28日㈬競輪界年内最大のグランプリシリーズが開催され、若手のヤンググランプリで菊池岳仁(岡谷南高出)が初優勝を果たし、29日に公開予定だったこの記事を保留しました。大晦日になってしまい大変恐縮ですが、恒例の2022年長野県開催・長野県選手のベストレース5戦を発表します。

毎年好評の企画であり、このベストレースに対して熱い感想のメッセージなども頂くのですが、振り返ってみて今年は「コロナ禍からの復興」という側面も大きかったと思います。選手個人というよりも、その大会が開催出来て、そこで走る選手達の姿そのものが非常に心を強くうったというレースが多々ありました。毎年、大手メディアが伝える「感動」とは全く違うモノをお伝えするので、一般のサイクリストの方から見ると「何であれが入ってねーんだよ!」とお叱りを頂くのですが!

この一年誰よりも近くで長野県のレース・長野県の選手たちを見て来て、たまに来て結果だけを見て伝える大手とは全く違った世界があるんです。まして別にウチは視聴数なんて取れなくてもいいし!誰か偉い人とか有名選手とかへの忖度そんなの関係ない!!

恒例のように自転車有識者の皆様からは、サイクリング長野ごときが何を言うか?という有難いお言葉も頂きそうですが、当サイトの独断と偏見で今年も5つのレースを紹介したいと思います。

 

 

①世界へテイクオフ!土屋凌我 圧巻の全日本三連覇!!

 

三連覇がかかった全日本選手権で圧巻のパフォーマンスを披露!
思わず障害の上に飛び乗り観客の歓声に応える土屋凌我

 

 

第11回全日本トライアル選手権
男子エリート20インチ決勝より

 

自転車で足をつかずに障害物を越える自転車競技

サイクル・トライアルの日本チャンピオンを決める

第11回 全日本トライアル選手権大会が6月26日㈰

小諸市の小諸南城公園特設トライアルコースで開催された。

 

 

この大会に出場した岩村田高校出身の土屋凌我(無所属)

男子エリート20(20インチタイヤの部)で

ここ数年大活躍を見せており、昨年の世界選手権では8位入賞

今年5月のW杯開幕戦では自身最高の7位入賞を果たしている

今の長野県自転車選手の中では最も勢いがあり世界に近い選手。

 

 

今大会も、ディフェンディングチャンピオンとして

コロナの影響で中止となった2020年を含め

2019年から足かけ4年をかけての

全日本選手権三連覇がかかった大会で

圧巻のパフォーマンスを見せた。

 

非常に挑戦的かつ安定した試技を終始見せた土屋凌我(無所属/岩村田高出)

 

テーマごとに分類された5つのセクションを

持ち時間2時間のなかで2周するという条件のなか

土屋選手は積極的な試技と安定感で

2位以降の選手に対し徐々にポイントで差をつけて

臨んだ最終セクションでの、最後の試技。 

 

 

多くの観客が見守るなかで

出場選手の誰もがクリアできなかった

障害を圧巻の大ジャンプでクリア。

 

 

 

 

その圧倒的なパフォーマンスは

今年数々のレースを見たなかで 

唯一「これが世界レベルだ!」と観た者にアピールする

間違いなく今年の長野県自転車界を代表するシーンの一つとなった。

全日本選手権大会公式リザルト〔PDF/大会公式HPより〕

 

 

 

男子エリート20で全日本三連覇を達成した土屋凌我
〔画像:右から3番目〕

 

 

圧倒的なパフォーマンスで全日本三連覇を果たした土屋選手は

その後、11月にUAEで開催された世界選手権に日本代表として出場

決勝へは進出できなかったものの世界選手権10位で大会を終えた。

今後も大いに活躍が期待される。

 

〔大会関連記事〕

〔土屋選手関連記事〕

 

 

 

 

 

②信州開催MTB公式戦ゼロの危機を救った「DHS白馬岩岳ラウンド」!

 

「長野県内開催MTB公式戦ゼロ」「国内ダウンヒル公式戦ゼロ」を
結果的に救ってくれた『ダウンヒルシリーズ』
当初は参加者が少なかったものの蓋を開けてみれば大盛況となった。

 

ダウンヒルシリーズ2020
第2戦白馬岩岳MTB PARKラウンド

 

 2022年2月上旬、長野県自転車界に大きな激震が走った。

それは、MTBの国内公式戦シリーズ戦である「Coupe du Japon」の

年間レースカレンダーに、長野県開催の記載が無かったこと。

 

 

それは長野県内でのMTB公式戦がついに消滅したことを意味する

日本マウンテンバイク業界においても非常に重大なニュースとなった。

 

 

それでも、当初は3月・4月と春になれば

何だかんだで開催が発表されるもの… 

楽観的な観測があったが結局シーズン直前となっても

長野県内でのMTB公式戦の開催は発表されなかった。

 

 

同時に大きな懸念となったのは

Coupe du Japonのカレンダーの中に

ダウンヒル競技が一切計上されておらず

国内でのダウンヒル競技公式戦が消滅するという

不測の事態に陥っていた。 

 

 

こうした先行き不透明な中で

3月のシーズン直前に大きな動きがあった。

 

 

それまで、公式戦とは一線を画し独自路線を貫いてきた

MTBのサイクルイベント「ダウンヒルシリーズ」(DHS)が

ダウンヒルシリーズをJCF公認の公式戦にすることを電撃発表。

 

 

 

 

同時に、長野県内で「第2戦白馬」「第3戦富士見」の

開催を発表することでギリギリのところで

国内ダウンヒル競技公式戦ゼロと、長野県内公式戦開催ゼロを

回避する結果となった

 

 

 

 

 

迎えた2022年6月5日㈯ダウンヒルシリーズ第二戦白馬岩岳ラウンドは

直前の情報では、選手のエントリーも少なく開催に不安があったものの

蓋を開けてみれば大盛況で、当日は岩岳MTB PARKの利用者も相まって

選手を運ぶゴンドラの前には長蛇の列が出来た!

 

 

山頂行きのゴンドラには、開催を待ちわびた選手と
多くのPARK利用者の列が出来た。

 

レースは、地元「白馬マウンテンバイククラブ」の

選手たちが、ホームでのレースで力走を見せ

Kids高学年の部で 渡邊善大(白馬MTBクラブ)が優勝。

また、女子エリートでも地元白馬高校の

原つばさ(白馬MTBクラブ)が3位に入るなどの活躍を見せ

当初の杞憂をまさに吹き飛ばす大盛況で幕を閉じた。

 

 

Kids高学年の部で優勝を果たした渡邊善大(白馬MTBクラブ)
このレースを皮切りに、富士見ラウンド・函館ラウンドでも活躍を見せる。

 

 

〔DHS第3戦白馬関連記事〕

 

 

その後、ダウンヒルシリーズは、富士見町でも開催され

12月に兵庫県で開催された最終戦まで

北は北海道から、南は宮崎県まで全7戦が開催された。

 

また、9月に開催された「ダウンヒル競技日本一」を決める

第34回全日本選手権では、長野県女子選手が活躍。

女子ユースで原つばさ(白馬MTBクラブ)

女子エリートでは、茅野高出身の

松本璃奈(Ride Mashiun Specialized)が共に二連覇を達成

全日本女王を戴冠した。

 

 

今年の「ダウンヒルシリーズ白馬ラウンド」開催は

単なるイチ公式戦が開催されたという意味だけで無く

長野県のMTB界・日本のダウンヒル競技界の危機を救う

非常に大きな意味合いを持った大会となった。

 

そして、「まだMTBは死んでいない!」とりわけ

「ダウンヒル競技は未だ健在である!」というアピールを

選手・関係者自身が高らかに掲げた大会でもあった。

 

 

 

 

③エース小松がチームを長野県自転車史上初の北信越高校王者に導く!

 

小松篤史(松本工業高3年)が、1㎞TTで初優勝
この勝利がチーム躍進のきっかけとなり
松本工業高を長野県勢初となる
北信越高校チャンピオンチームへと押し上げた

 

 

第54回北信越高校体育大会 -自転車競技-
令和4年インターハイ最終予選

 

今年の長野県自転車界の3大ニュースを上げれば

やはり外せないのは…

 

 

松本工業高校自転車競技部が

長野県勢として、初の北信越高校自転車大会で

団体総合優勝を果たしたことが挙げられる。

 

 

その中で、最上級生としてチームを牽引し

この2年間コロナの影響でことごとく

全国大会への出場を閉ざされ続けた

不遇のエースだった小松篤史キャプテンの歩みは

今年の長野県自転車界を語る上で

忘れられない一コマとなった。

 

 

小松主将に関しては、中学生時代から美鈴湖自転車学校に参加。

発足当時の自転車学校では、最年少だったため

長野県自転車界の末っ子的存在。

 

 

そんな小松選手が、1年秋から急成長し

それ以降、長野県短距離のエースとして

県内の大会で優勝を重ね続けた。

しかし、コロナ禍にことごとく巻き込まれてしまい 

ついに全国大会とは無縁のまま

インターハイをかけた最後の北信越大会に臨む。

 

 

2022年6月16日㈭ 石川県立自転車競技場で

第54回 北信越高校体育大会自転車競技大会が開幕。

 

 

本格的競技開始となった「大会二日目」午前中に行われた

男子1㎞タイムトライアルで、注目のエース小松が登場。

持ちタイム的にも最も優勝に近いこの種目で前評判通りの力走をみせる。

石川競技場独特の強い風の中、見事な走りで出場選手唯一の

1分7秒台をたたき出し、有言実行の北信越チャンピオンを戴冠。

そして、インターハイへの出場権をほぼ手中に収めた。

 

 

最初で最後のインターハイをかけて力走する小松篤史

 

 

キャプテンの力走に、チームが大きく波にのり

大会二日目は、団体追抜きで準優勝

2年生の上里翔瑛がスクラッチで優勝。

速度競走では酒井優太郎(2年)が準優勝。

3㎞個人追抜きでも山口多聞(2年)が準優勝。

 

 

大会三日目も快進撃が続き、チームスプリントで準優勝。

スプリントで片田啓太(2年)が3位表彰台

さらに、小松主将自身も2種目目のケイリンで準優勝。と

大躍進を見せ、チームを長野県自転車史上初の

北信越総合チャンピオンへと導いた。

 

 

北信越高校自転車史54年の中で長野県勢初の
団体総合優勝を果たした松本工業高

 

〔北信越大会の関連記事〕

 

 

その後、小松主将率いる松本工業高校は

8月に香川県で開催されたインターハイに

北信越チャンピオンとして出場。

小松選手はケイリンで準々決勝へ進出

また、初出場となった全日本選手権の

1㎞タイムトライアルでは6位入賞を果たした。

 

全日本選手権Jr.では1㎞TTで6位入賞を果たした。

 

今振り返れば、小松選手は

「凄く自転車が好きな子」であるにも関わらず

同学年に男子自転車選手がおらず

一人この世代を支えてきました。

そこへ前筆のコロナ禍もあり終始それに

振り回された3年間でもあったと思います。

 

それでも、小松選手が

誰もいない美鈴湖で黙々と一人練習していたことは

多くの人が知っています。

 

不遇ではあったけれど、数少ないチャンスの中で

記憶にも記録にも残る大きな印象を与えてくれ

そのキャラクターは、本当に多くの自転車関係者に

愛された存在でもありました。

 

今後は競輪選手を目指すべく、競輪学校入学を目指すそうです。

引き続き小松選手のストーリは続いて行きます。

 

 

 

 

④1年間の苦難の末に 小林洋平の挑戦。

 

1年前のジュニア五輪落選から苦しんで苦しみ抜いて
初出場を果たした大会で大きな成長を見せた小林洋平

 

JOCジュニアオリンピックカップ
男子U-15 1㎞タイムトライアル決勝

 

今年のベストレースを書く上で

最も多くの人と感動を分かちあったレースはどれか?

と問われれば、間違いなくJOCジュニアオリンピックでの

小林洋平(信州大学附長野中学2年)のレースを上げたいと思います。

 

 

このレースも、小松同様に…

距離にして1㎞、時間にして僅か1分15秒

 

 

そこに辿り着くまでの長い長い道のりを知るからこそ

多くの人の心を捉えたのだと思います。

※それ故に、どこから話せばいいのか悩むところだし
 話すことがありすぎて、何を話していいのか逆に難しい。

 

 

2022年7月17日㈰ 今年のU-15・U-17の全国大会である

JOCジュニアオリンピックカップトラック競技が

松本市美鈴湖自転車競技場にて開幕。

 

 

この大会は先ず、各大会で出した自分のベストタイムを申請して

そのタイムを審査され、全国から精鋭9名が選抜される。

 

 

遡ること1年前… 

 

 

当時、トラック競技を始めた小林洋平(当時:中学1年生)は

残念ながらこの出場標準記録に届かず

ジュニアオリンピックへの出場権を獲得出来ず

非常に悔しい想いをした。 

 

 

ここから1年間、小林選手の

長く厳しい「出場への道」が始まる。

 

 

毎回、自宅のある長野市から美鈴湖まで

自転車学校や育成練習会のたびに足しげく通い

熱心に練習を行うも、なかなかタイムが伸びな時期もあり

焦りや苛立つこともあり、苦悩を重ねるなか…

 

 

競輪の小峰烈選手会長野支部長や、

北澤竜太郎長野県代表キャプテン

県最年長トラック選手の小林英樹選手などが

根気強く指導して行きます。

 

 

そのなかで、洋平選手が

小峰支部長や、北澤・小林選手から

怒られたり、厳しく注意されている姿も

本当に良く見ました。

 

 

そうして迎えた、春の開幕戦

松本サイクルトラックレース(5月)で

自身が目標としていた1㎞のタイム

1分20秒台を出します

ここから、洋平選手の快進撃が始まります。

 

 

7月のJOCジュニア五輪の申請直前に行われた

実業団の公式記録会で1分15秒502をたたき出し

昨年のジュニアオリンピックの優勝タイムに迫る

記録を引っ提げて、1㎞タイムトライアルに加えて

3㎞個人追抜きでも1年越しのジュニア五輪出場権を獲得。

 

 

 

 

迎えた大会初日、3㎞個人追抜きは

短距離を得意とする洋平選手にとっては

どちらかといえば専門外の種目ですが

夢にまでみた初出場のJr.オリンピックの舞台で

堂々たる走りを見せます。

 

 

初出場のJr.オリンピック、1年間洋平選手を支えた
北澤竜太郎長野県代表キャプテンがコーチングボックスに入り
洋平選手にラップタイムを伝えながら指示を送る、

 

同じく、洋平選手を指導した県最年長のトラック選手
小林英樹選手が、観戦が許可されているギリギリのエリアから
身を乗り出して洋平選手を応援して行く。

 

 

沢山の声援を受けての初めての挑戦は

自己ベストを更新しての6位入賞となった。

 

 

ゴール後の咆哮は、まさにこの一年の想いがこもったものだった。

 

 

迎えた大会二日目は、いよいよこの1年

全てはこの日のためにやってきたと言っても

過言では無い1㎞タイムトライアルを迎える。

 

 

全てはこの日のために… 
いよいよ1㎞タイムトライアルを迎え
ウエイティングゾーンで一人集中する

 

ここまで本当に苦難の道のりであり
あっちへ行っては壁にぶつかり、こっちへ行っては壁にぶつかり
傍目に観ていても決してスムーズな道のりでは無かったが

振り返ってみるとレースでの走りは驚くほどスムーズで
ある意味「とても静かな走り」だった気がする。

 

レースを終え、再び感情が爆発する。
洋平選手を始めてみた審判の方が言っていたが
彼はまるでマンガの中から出てきたかのような
キャラクターを持っていて、人を惹きつけるモノがあると
語られていたのが印象的だった。

 

 

初めてピスト自転車に乗った日から

洋平選手を見続けて来たが、このレースを終えて

三つ大きく成長を感じたところがあった。 

 

初めて美鈴湖に来た頃は、自分から

全く話しをすることが出来ずに

先ずコミュニケーションをとるところから始めたが… 

 

この日、多くの先輩や共に走った仲間たちが

洋平選手のことを応援していたこと。

そして、レースを終えて自身を支えてくれた方々へ

自分から御礼を述べに足を運んでいたこと

 

 

そして、最後に… 

 

 

表彰式の際に、自分からライバルだった

選手たちに声をかけて、健闘を称えあっていたこと

 

 

まだまだ中学2年生で、コーチ陣が求めることは

もっと高いところにあるのかもしれないが、

洋平選手のこの1年間の葛藤と弛まぬ努力。

そして、この日見せた逞しく成長した姿は 

観戦した人の心に大きなものを残した。

 

JOCジュニア五輪3位もさることながら
初めて美鈴湖へ来た頃は、自分から全く喋らなかった
洋平選手が、この日の表彰式を前に共に走った選手に
自分から語り掛けている姿を見て
洋平選手自身も、この1年間の挑戦を通じて
非常に多くのモノを得たことを感じた。
ここで得たモノは今後の人生でも非常に大きな財産となる。

 

 

〔関連記事〕

 

 

 

 

 

⑤県最年長 小林英樹選手 圧巻のWタイトル獲得!!

 

60歳になってから本格的に始めたトラック競技
3年ぶり開催となったマスターズ国体で
悲願の初優勝は「ケイリン」と「スプリント」のダブルタイトル!

 

 

日本スポーツマスターズ2022 岩手大会
男子65歳以上ケイリン決勝&スプリント決勝

 

こコロナの影響で最も不遇だったカテゴリーといえば

35歳以上の壮年選手の部(マスターズカテゴリー)で

この3年間でマスターズの全国大会はことごとく中止となり

本年開催だった、マスター選手のオリンピックに当たる

ワールドマスターズ2022も中止となった。

 

そんな中でも、長野県の壮年マスターズ選手たちは

腐ることなく、大会が無い期間も練習に励み続けた。

 

特に、長野県トラック競技選手の最年長選手である

小林英樹(MISUZUKO TEST TEAM)は、

最年長選手でありながらも、県の合同練習では

中高生よりも早く会場に現れ、率先して練習を行い

その姿は長野県の全ての自転車選手に

大きな影響を与え続けて来た。

 

 

そんな小林選手が、3年ぶりに開催された

マスターズ国体「日本スポーツマスターズ2022岩手大会

7部(65歳以上の部)で大活躍をみせた。

 

 

2022年9月24日㈯ 岩手県「紫波町英自転車競技場」で

開幕した同大会の、大会初日

スプリント予選200mフライングタイムトライアルに出場した。

この種目、7部カテゴリー(65歳以上の部)は

全国からの精鋭12名がエントリーしての大激戦区となった。

 

 

折からの台風で雨と風の悪コンディションで

年代問わず多くの選手がスリップによる落車に悩まされるなか

小林選手は出場選手の中で唯一12秒台をたたき出し

危なげなく予選1位で準決勝進出。

 

折からの台風による強風と雨で非常に滑りやすい
コンディションながらも、予選の200mTTで
唯一の12秒台を記録し、危なげなく予選1位で準決勝に進出。

 

 

相手選手と1対1の戦いとなる

準決勝は千葉県の藤野選手と対戦。

 

藤野選手との準決勝は、競技場を大きく使った
駆け引きの応酬から、残り1周で小林選手が先に逃げると
そのまま見事な1本勝ちを収めた。

 

 

〔大会初日の模様〕

 

 

 

大会二日目は、ケイリン決勝とスプリント決勝。

ケイリンの決勝のあと、スプリント決勝(3本勝負)という

非常にタイトなスケジュールとなった。

 

 

ケイリンは、前回2019年大会では

3位表彰台を獲得しており

今大会は優勝を狙って臨んだ。

 

大会2日目前日とは打って変わって天候に恵まれた紫波自転車競技場
2019年以来の開催となったマスターズ国体で優勝を目指し
ケイリン決勝戦の位置につく(内から2番目)

残り2周で左右・前後を囲まれてしまい「蓋をされてしまう」状態になり
かなり厳しいマークを受けるが、残り1周でスピードアップすると
同走選手が徐々に後退して行く。

最後は圧勝でマスターズ国体自身初の優勝を成し遂げる
ただし、スプリントの決勝がこの後に控えていたため
優勝の喜びなく慌ただしく決勝の準備に向かう。

 

およそ1時間のインターバルの後

小林選手は、スプリント決勝戦を迎える。

 

 

スプリント決勝は3本勝負で行われ、先に2勝した者が優勝となる。
決勝の相手は静岡県代表の豊田選手
1回戦は抽選に勝って「外側スタート」をとる小林英樹

お互いに牽制を続けながら残り1周で
山側にいた小林選手が有利な傾斜を使って
一気にスパートをかけて先制する。

二本目は内側のインスタートとなった小林選手
今度は豊田選手のスパートを「受ける」体制に持ち込むと思われたが…

最終第二コーナーで先に仕掛けたのは
谷側にいた小林英樹選手
さもすれば不利な状況から一気に加速…

豊田選手の猛追を振り切り、僅かな差で
ケイリンに続き、スプリントも初優勝!
3年ぶりのマスターズ国体で二冠を達成した。

60歳を過ぎてから本格的に始めたピスト競技で
初めて日本一となった小林英樹選手。

表彰終了後に決勝の相手である豊田選手を始め
共に大会を盛り上げた65歳以上の選手達と
がっちり握手をする姿がとても印象的だった。
「健康にまた来年!」その言葉はスポーツの本来
あるべき姿を教えてくれていた。

 

 

こうして、3年ぶりの開催となった

マスターズ国体「日本スポーツマスターズ2022」は

無事に終了しました。

 

 

台風の影響で初日は大荒れの天気でしたが、今年

日本で開催予定だった「ワールドマスターズ」が中止となり

コロナ禍で最も不遇だった35歳以上の壮年選手の戦いが終わりました。

 

 

今大会で3年ぶりに顔を合わせた選手も多く 

「元気だった?」とお互いの状況を確認しあう

シーンもあちこちで見られました。

そこにはスポーツが本来もつ

根源的な原風景のようなモノに立ち返らさて

もらえた気がします。 

 

 

ここ数年来スポーツをみていて

久しぶりに「あぁ…スポーツは素晴らしいな」と思わされました。

 

 

そして、小林選手… 

 

 

今日も、長野市の山の中を元気に

MTBで走ってるのですかね?

 

 

年齢のことをあまり言うのは

気が引けますが、小林選手は

自転車のプロ選手だった訳ではありません。

それにも関わらず70歳という年齢を目前に

未だに、長野県の競輪選手や高校生選手と

同じ目線で練習している姿からは

多くの人が必ず刺激を受けます。

 

 

このまま小林選手を始め65歳以上の選手が

元気に走り続けるならば、自転車界にも

今後あたりまえに「65歳以上の部」が出来るでしょうし

「70歳以上の部」というのも近々出来るかと思います。

 

これからも長野県自転車界の先頭で

日本自転車界の道を切り開き続ける

小林英樹選手とマスターズ選手の活躍を期待したいと思います。

 

 

〔日本スポーツマスターズ関連記事〕

 

 

 

 

 

〔特別〕KEIRINヤンググランプリ2022 菊池岳仁が初優勝!

 

令和の怪物と呼ばれた菊池選手がデビュー3シーズン目にして
若手最高峰の「KEIRINヤンググランプリ」に出場し
長野県自転車史初となる長野県選手による特別競輪初優勝!

 

KEIRINヤンググランプリ2022

 

2022年12月28日㈬ 平塚競輪場で開催された

競輪界の一年を締めくくるビッグイベント

「KEIRINグランプリシリーズ」。

 

そのデビュー3年目までの選手が出場出来る

「KEIRINヤンググランプリ」に

岡谷南高校出身の菊池岳仁(117期/長野)が

初出場しました。

 

菊池選手はご存じの通り、高校1年生まで

冬季インターハイでも入賞するスケート選手でしたが

高校2年生の終わり頃から自転車競技に転向。

 

3年生のインターハイに自転車で初出場すると

1㎞タイムトライアルで7位入賞

続けて初出場した「福井国体」では

同種目4位入賞を果たしました。

 

その後、競輪学校入学

成績優秀者の証ゴールデンキャップ獲得。

そして、競輪学校から養成所となって

初の成績優秀につき早期卒業。

そして、デビュー戦から無傷の12連勝を経て

今年の1月に最高位「S級1班」に昇進。

 

 

しかし、その周囲の期待が大きいが故に

伸び悩みも指摘されていました。 

 

それを象徴する出来事だったのが

今年の10月にサテライト信州ちくまで行われた

自身初の「トークショー」でした。

 

このトークショーで印象的だったことは、

熱心な菊池選手のファン方々から非常に

熱いメッセージが語られていました。

それはあたたかくもあり、非常に厳しいモノで… 

 

 

いまの「先行逃げ切り」一本鎗の戦法では

S級上位の強豪選手との対戦の中で限界がある!

菊池選手はもっと、様々な戦い方のバリエーションを増やし

高い次元(重賞レース)に通じるように

学んで行かなければならない!

菊池選手はそれだけの選手である!

期待している頑張ってほしい!”

 

 

というモノでした。自分はファンのこうした

声を聞いていて、ファンの方というのは

本当に良く見ていて、素晴らしいなと感じさせられました。

 

 

迎えた「ヤンググランプリ2022」。

 

 

実は自分は「サテライトちくま」に

珍しく出向いて車券を買ったのですが…

 

 

菊池選手は戦前のインタビューで

得意の「単独先行逃げ切り」ではなく

①番車の吉田選手との共闘を発表

 

 

さらに驚いたのは… 

 

 

①吉田選手の後方について、

吉田選手を風よけにつかって

後ろにから勝利の機会を伺うというモノでした。 

 

 

これにはサテライトちくまに集まった

熱心な関係者・ファンの皆さんも 

 

 

グランプリ本番で

今まで一度もやって来なかった戦法を

ここでやるのは… うーん…

 

 

 

と非常にザワついていたのが印象的でした。

 

 

そして、迎えたヤンググランプリでの結果は

皆さんが、もう知る通りだと思います。

 

 

〔ヤンググランプリ2022〕


(参照元:Youtube/bank shonan

 

 

 

この勝利を語る上で忘れてはならないのは

①番車吉田選手の献身も非常に大きかったと思います。

やはり、菊池選手本人も語っていましたが 

吉田選手の先頭で必死に牽引して行く姿は

観た者の心に大きなモノを残したと思います。

 

そして、あの日トークショーで熱心なファンから

指摘されていた「上で勝つための条件」を

ぶっつけ本番で見事にやり抜いて見せたことも

単に重賞を勝ったというだけでなく

今後の菊池選手を語る上で大きな

ターニングポイントになったと思います。 

 

 

とにかく、年末の菊池選手の偉業達成というのは

長野県の自転車界に今まで無い規模のモノであり

少し当サイトが語るに憚られる部分もあるのですが… 

 

菊池選手の活躍は、間違いなく

今後の長野県自転車界の大きな1ページとなり

多くの選手に大きな大きな影響を及ぼす勝利となりました。

 

〔KEIRINヤンググランプリ関連記事〕

 

 

 

サイクリング長野より

 

 

 

 

 という訳で、今年のベストレースいかがでしたか?

ちょっと、一昨日の菊池選手の偉業が

自転車界においては異次元すぎてしまって

「甲子園で長野県が初優勝しました!」くらいで

興奮冷めやらぬところですが…

 

 

それでも!

 

 

いま振り返ってみると、今年のテーマは「コロナからの復興」が

挙げられる気がします。

 

 

特に、35歳以上の「マスターズ選手たち」ですよね。

 

 

この3年間、全く大会が行われなくて

挙句の果てにマスターズ選手のオリンピックである

ワールドマスターズが日本開催であったのにも関わらず

中止となってしまった。

 

 

それでも、何度も伝えているとおり

長野県の選手たちは誰一人腐ることなく 

人影まばらな美鈴湖で練習している… 

 

 

ある選手はコロナ以降選手として復帰できなくなってしまったり

ある選手は練習中の大落車で大怪我を負ってしまい

未だ競技に復帰出来なくなってしまったり… 

 

 

年齢が高くなると、置かれている状況や

健康問題などなど様々な問題がある中で

全日本マスターズや、マスターズ国体に出れなかった

選手も沢山いた訳です。

 

 

そうしたなかで、長野県のマスターズ選手がこの

3年のうっぷんを晴らすような大活躍を見せてくれたことは

自転車業界に携わる人間としてとても嬉しかったことです。

 

 

そのなかで、長野県最年長トラック競技選手である

小林英樹選手のマスターズ国体でのWタイトル獲得を

今年一番のハイライトとすることに

異存のある人は殆どいないと思います。

 

 

また、全日本マスターズ選手権で優勝した

諏訪市出身の羽田野選手が表彰台で見せた

涙も今年の長野県を代表する1シーンだったと思います。

 

 

羽田野選手は全日本マスターズ個人追抜き優勝のインタビューで
偉大な先輩方の記録を破ろうと走ってきました
今日まで自分を支え応援して下さった皆さんのことを想うと…
と話したところで思わず言葉がつまり天を仰いだ。
この姿はこの3年間のマスターズ選手の想いを代弁していたようにも思えた。
〔全日本マスターズ選手権より〕

 

全日本マスターズ1㎞TTで大会新記録を更新し
全日本マスターズチャンピオンとなった。

自転車学校の子供達の声援にこたえる小峰烈選手

 

 

こうしたマスターズの選手たちの活躍は

これからの長野県の高齢者スポーツ・生涯スポーツにも

大きな影響を与えるもので、来る2025年問題を前に

一石を投じるモノとなったことと思います。

 

 

一方で子供達の成長も

非常に著しかったと思います。

 

 

北信越高校自転車大会で県勢として

史上初の団体総合優勝を果たした

松本工業高校の活躍は、大きな歴史の1ページになりました。

 

 

北信越高校自転車大会で初優勝を果たした
松本工業高校自転車競技部

 

 

また、Jr五輪で活躍をみせた

小林洋平選手(信大附属長野中)の鬼気迫る

自転車への取り組みと、それを通しての

人間的な成長というのも

いま子供達の育成に力を入れる

長野県においても非常に大きな意味を持つ

モノで、それに続く小中学生が

成長をし始めたことも大きな進化を感じました。

 

 

 

今まで自転車は「お金持ちのスポーツ」「親が自転車選手の子供のスポーツ」という
イメージがなかなか崩せなかったところがあるが、長野県が徐々に力を入れ始めた
取組みが非常に大きな成果を残した一年でもあった。
特にこの「U-15」「U-12」チームは長野県を代表する
自転車好きが集まった将来が楽しみなチーム

 

 

最後に、昨年と同じことを綴ります。

 

 

印象に残るレースというのは勝敗よりも

ソレを観た人の心に何を与えられたか?

何を残すことが出来たか?に尽きると思います。 

 

 

勝者は気高く尊い存在です。

勝負である以上、勝敗というのは1番大切です。 

 

 

しかし、物事は1番の前に

それ以上に大切な「0番」があるということを

忘れないで下さい。 

 

 

この「0番目の何か?」勝利より大切な何かは

その人、その人の価値観によって異なります。

 

 

どうか来年も、長野県の選手たちには

今日初めて自転車を観戦に来た人が見ても

「長野県の選手がこんなに頑張っていた!」と

家に帰って語りたくなるような走りを期待しています!

 

 

【過去のベストレース5戦】

 

 

 

という訳で、今年の

ベストレース5選でした。

まだ伝えるべきレースはあるのですが…

 

これも毎度なんですが!

 

この5選をみて、何で俺のレースが

とりあげられねーんだよ!

来年は、俺のレースを観に来い!

 

というイキの良い選手が表れてくれれば

本当に最良です。

 

 

さて、長野県民の皆さん…

 

 

長野県の自転車選手たちは

この一年をかく戦いました!

その戦いは、非常に勇敢だったと

謹んでお伝え致します。

 

来年も長野県の自転車選手たちに

どうか変わらぬご声援と

大会への御理解・御支援を賜りますよう

心よりお願い申し上げます。

そして、願わくば是非

直接会場へお越しいただき

選手達へ声をかけて頂ければと願います。

 

また来年も観る人の心に何時までも

残るような走りを期待しています。

 

関連LINK

長野県自転車競技連盟

日本トライアル協会

ダウンヒルシリーズ

長野県高等学校体育連盟

長野県スポーツ協会

日本スポーツ協会