もくじ
〔レポート〕「2024年JOCジュニアオリンピックカップ」県勢の大会二日目の結果。
2024年のJOCジュニアオリンピック自転車競技大会が
7月14日(日)・15(月/祝)の両日、松本市美鈴湖自転車競技場にて開催された。
長野県からはこの1年の各大会での成績を加味され選抜され
U-17(高校2~中学3年)2名と、U-15(中学3年~中学1年)の
3名が選出された。
大会初日は美鈴湖競技場始まって以来イチにを争う豪雨の中で
清水京一朗(旭町中3年)と、松宗士織(丸ノ内中2年)が
3㎞個人追抜きに出場、清水京一朗は7位入賞を果たした。
大会最終日となった2日目は、長野県代表全選手が出場。
前日の雨が残りながらも、前日に比べると雨が止む時間も多く
長野県勢では、Jr.オリンピック初出場の
古畑遙杜(広徳中2年)と、伊東光太郎(松本深志2年)が
悲願の全国の舞台へ立った。レポートは以下のとおり…
※なお、前日の大雨でカメラが故障したため
写真が極端に少なくなっていることをお詫びいたします。
《2024長野県Jr.五輪代表紹介》
《大会初日レポート》
レース前レポート
前日の雨がまだ競技場に残るなか
選手たちが試合用のホイールに履き替え
タイヤに空気を入れてセッティングを始める。
この日もサポートスタッフとして村上真絆(上田東高1年)が
チームに帯同して選手のサポートを行う。
【画像一番左】
大会二日目は5名全員が登場となる。
朝のミーティングで小峰監督の指示を聞く選手たち。
サポートの村上(上田東高)が時間を管理しながら
ローラー台でウォーミングアップを始めたのは
初出場の古畑(広徳中2年)と伊東(松本深志2年)の二人。
昨日のU-15男子3㎞個人追抜きで自己ベストを更新して
7位入賞を果たした清水京一朗(旭町中3年)も
ローラー台でウォーミングアップを開始する。
Jr.五輪と共催となった「全日本選手権マスターズ」の
2㎞個人追抜き(50歳以上の部)で前日に日本チャンピオンとなった
諏訪出身の羽田野隆彦選手(ルクトスキップ/長野登録)が
小峰監督と伊東(松本深志)に声をかける。
男子U-17 1㎞個人追抜き
順位 | 名前 | チーム | タイム |
優勝 | 松田奏太朗 | 松山学院高校 | 1:07.953 |
2位 | 水谷 悠平 | 新潟県立吉田高校 | 1:08.981 |
3位 | 山本 陸人 | 松任高校 | 1:09.273 |
17位 | 小林 洋平 | 屋代高等学校 | 1:12.077 |
22位 | 伊東光太郎 | 松本深志高校 | 1:18.019 |
公式リザルト〔PDF/大会公式〕
昨年、学校の都合で1度は自転車を諦めた伊東光太郎(松本深志2年)が
悲願の全国大会の舞台へ向け、選手控えテントに姿を現す。
初出場の伊東からは終始緊張が伺えた。
選手紹介でお伝えしたように、ここに立つまでの伊東選手は
様々な困難に見舞われた。春先から一人クロスバイクを
丸ハンドルに改造してレースに出場を続け、4月の松本トラックでは
鮮烈なデビューを飾ったものの、初めてのインターハイ挑戦は
コロナに見舞われ走ることなく終わった。
それでも、そんな伊東選手に自転車の神様は大きなチャンスをくれた
この数週間、まともな練習が出来なかったうえ
DHバーの練習も間に合わなかったため
丸ハンドルでレースに臨んだ。
力走を見せた伊東選手だったが、1分18秒と
自己ベストにも遠く及ばない結果となった。
それでも、1年前に「高校での自転車をあきらめよう…」
「大学自転車でインカレを目指そう!」と声をかけたあの日から
1年後にまさかJr.オリンピックを走っているとは誰が想像できただろうか?
様々な困難があって、その先で得た今回の「悔しい想い」は
伊東選手のこの先の人生において大きな財産となるであろう。
2年前のこの大会U-15タイムトライアルの銅メダリスト
小林洋平(屋代高校1年)が3年連続の出場。
このあと、午後に予定されている男子スプリントが本命だが
得意のこの種目でも上位進出を狙う。
小林洋平は、2週間前に自転車を乗り換えたこともあり
ここのところは、自転車と折り合いをつけることがなかなか出来なかった。
目標だった1分10秒台には届かなかったが
午後のスプリント予選へ向けて力走を見せた。
男子U-15 1㎞個人追抜き
順位 | 名前 | チーム | タイム |
優勝 | 山本 修斗 | アトラップレーヴ | 1:10.880 |
2位 | 中川楓汰朗 | 松ヶ江中学校 | 1:12.429 |
3位 | 加栗 航太 | 広島城北中学校 | 1:15.266 |
6位 | 清水京一朗 | 美鈴湖VELOクラフ/旭町中学校 | 1:16.861 |
12位 | 松宗 士織 | 美鈴湖VELOクラフ/丸ノ内中学校 | 1:18.296 |
17位 | 古畑 遙杜 | 美鈴湖VELOクラフ/広徳中学校 | 1:20.778 |
公式リザルト〔PDF/大会公式〕
U-15タイムトライアルの長野県勢トップを切って
第2組に初出場の古畑遙杜(広徳中2年)がスタンバイ。
ウエイティングエリアでは初の全国大会で
ずっと顔を覆っている姿が印象だった。
4月にはまだビンディングペダルに四苦八苦していた古畑だが
松本トラックでデビューすると、長野県大会、実業団おんたけロード
そして、先週の実業団ながわロードTTと各大会を通じて
見違えるほど上達してきた。
特にスタートから半周のタイムが18秒台とかなり遅かったものの
この数週間はスタート練習に力を入れ16秒台に大きく成長。
その課題のスタートを見事にこなして行く。
今回、練習用のフレームしか用意出来なかったが、湯原コーチが現役時代に
使っていたフレーム前週に乗り換えた。ホーム・バックの対戦方式となった
今回のタイムトライアル。序盤から相手選手にリードを許し続ける
非常に厳しい展開となったが、古畑が最初から出来ていた
持ち味である「ラップを揃えられる能力」「大崩れしない走り」が
このレースでも十分に発揮された。
残り2周となると相手選手に追いつき、最後の最後に大逆転を見せた。
初出場の大舞台で自己新を更新。
春の松本トラックでは1分28秒だった記録を僅か3か月で8秒も短縮した。
しかしそれ以上に評価したいことは、初めて来た頃はなかなか
チームと馴染めず、輪に入れなかった古畑が
チームメイトに対して大声で声援を送っていた姿が
今大会を通じて一番印象に残ったシーンだった。
タイムだけでなく、この3か月で人間としても
大きく成長した古畑選手の今後に期待したい。
昨日の3㎞個人追抜きで自己新記録を更新10位となった
松宗士織(丸ノ内中学校2年)が第7組に登場。
昨日に続いての上位進出を狙う。
松宗もこの数週間、特にスタートの改善に力を入れて来た
昨日も検車でDHバーの位置を下げ、この日もギアが変更になって
なかなかセッティングで落ち着かなかったが
そうしたアクシデントにも動じず落ち着いて課題のスタートを切れた。
昨秋の長野県大会では1分25秒だったが
今年の初戦となった長野県大会では1分18秒830を記録。
その後の練習でも18秒台をコンスタントに出せるようになった。
前日に続きこのレースでも後半に粘りの走りを見せて
1分18秒296で10位となった。
松宗もこの1年間で大きな成長を見せてくれた。
U-15今大会最終走者は昨日の3㎞個人追抜きで7位入賞の清水京一朗(旭町中3年)
今年のU-15ではスタートから半周までのタイムが最も速く
スタートを得意としているが、1回目のスタートでホーム側の選手がフライング。
再発走となるアクシデントもあったが、得意でもある綺麗なスタートを切る。
この日も持ち味の白線の上を正確無比に走る
見事な走りを見せる。
一昨年、スタンドの外からこの大会に出ることを夢見た清水京一朗。
悲願の初出場となった昨年は1分20秒と失速、笑顔無きJr.五輪デビュー戦だったが
今年は春先からDH・ディスクホイールを使わずも1分18秒が出せるようになって
臨んだ2回目のJr.五輪は1分16秒861の自己ベストを更新した。
最後は自力で自転車を降りれなくなるほど疲弊した清水京一朗を
サポートスタッフの村上(上田東高1年)と、今年は所属する
サッカー部の試合のため出場出来なかった清水琥太郎(上田第五中3年)が
クールダウン用のロードバイクを持って迎える。
この村上・清水琥太郎の裏方としての活躍も
このチームの大きな原動力となった。
男子U-17 スプリント予選/トーナメント戦
スプリント予選(200mタイムトライアル)
順位 | 名前 | チーム | タイム | 準々決勝進出 |
1位 | 露木 英志 | 鳥取湖陵高校 | 11.205 | ✓ |
2位 | 坂上 晄幹 | 内灘高校 | 11.435 | ✓ |
3位 | 成合 悠斗 | 宮崎農業高校 | 11.606 | ✓ |
7位 | 小林 洋平 | 屋代高等学校 | 11.833 | ✓ |
上位8名までが準々決勝進出
公式リザルト〔PDF/大会公式〕
午前中1㎞を終え、午後は200mタイムトライアルという
非常に厳しいスケジュールとなった今大会だったが
それでも洋平選手は11秒8で予選7位でベスト8へ進出を決めた。
スプリント準々決勝(第二試合)
順位 | 名前 | チーム | タイム | 準決勝進出 |
1着 | 坂上 晄幹 | 内灘高校 | 11.916 | ✓ |
2着 | 小林 洋平 | 屋代高等学校 | 準々決勝敗退 |
公式リザルト〔PDF/大会公式〕
小林洋平(屋代高校1年)の準々決勝は予選2位の坂上選手(内灘高校)となった。
昨年は中学生ながら高校生を相手に善戦した洋平選手が
くじ引きでインを取り半周回の先頭義務が発生し先頭を走る。
残り1周ではお互いまだ牽制状態
比較的静かな展開d後半戦を迎える。
レースが動いたのは残り1周の第2コーナー手前で
坂上選手が一気に仕掛け、これを洋平選手が
追いかけるかたちになる。
レースは残り半周から坂上選手がリードを広げて準決勝へ進出。
洋平選手は昨年と同じく準々決勝敗退となった。
2024年Jr.オリンピックを終えて。
2024年のジュニア五輪を終えて
今年もジュニア五輪が終わりました。長野県の少年・壮年競技者育成クラブである「長野県美鈴湖VELOクラブ」にとってこの大会は年間最大の目標であり、そこへ向けてこの1年間長くて短い旅をして来ました。先ずは、このプロジェクトに格別の御高配を賜りました支援者の皆様、指導をして下さった競輪選手会長野地区長の小峰烈監督、県車連の湯原コーチに心より御礼を申し上げます。また、1年間裏方として様々なフォローをして下さった兼平コーチ・金原コーチ・平林武流コーチ・日比メカニック・長野県代表の北澤キャプテンにも合わせて御礼申し上げます。
さて、今年の長野県代表ユースチームでしたが
昨年このレポートで「長野県自転車界は子供たちを育成するという意識が低すぎる!」そこを改善しなければ、若者たちも育たないし、それを支え・導く大人達も育たないと訴えました。その観点からこの1年を振り返れば、言葉どおりに「今やれることの中では最大限のことは出来たかな?」と思います。ただし、自分自身を評価したときに、ではそれはどの程度の次元で出来たのか?例えベストを尽くしたとしても、それがどの程度のレベルで出来たのか?で評価が大きく変わります。
それを踏まえて、昨年からの1年間のVELOクラブのアプローチをテーマ別に振り返りたいと思います。
【怪我人・病人の発生と体調管理について】
【指導の新しい取り組み/アナライズメント】
ある日の1㎞のグラフ自分の走りの傾向を目視化する。
【課題としての指導者育成】 そうした中で、いかに新しい指導者・次世代の指導者を育てるのか?は引き続き今後の大きな課題であり、そうした人材を育てる育成システムの構築。また最大の問題として、育成に関わるお金の問題も早急にクリアしなければ将来的な継続も出来ません。 同時に大切なのは、大局を見通せる視座を持ったフロント(チーム編成・マネージメント・次代の発掘/育成・前筆のアナリスト含む)の人材育成も早急に取り組まなければなりません。我々は金銭的にそれで生活できるプロ集団では無く、指導者は殆どがボランティアです。近々の課題として、いま育成に携わる人材の負担を、多くの人間で広く薄く分担できるようにして行かなければ早晩このプロジェクトは立ち行かなくなること(育成の分業化)も重要な課題として付け加えておきます。
競輪界からは小峰選手だけなく、ガールズ競輪の
【今年のVELOクラブ・チームを振り返って】 特に伊東については再三のとおり、所属高校の当時の事情もあり、1度は「高校での自転車をあきらめよう…」「大学でインカレを目指そう」と話した時の気持ちは、15歳の子に対してあれほど残酷なことを言い、忸怩たる思いを感じたことはありませんでした。それでも、伊東は自転車を諦めなかったし、その後も物事が全く平坦に進まないなかでの初出場は本当に苦難を乗り越えた伊東へ自転車の神様のプレゼントだったと思っています。ただし、そのプレゼントの中身は自己ベストにも及ばない屈辱的な内容でした。しかし、それはこの先振り返ってみて今後に繋がる非常に良い神様のプレゼントだったとも思います。今まで多くの困難を乗り越えて来た伊東選手であれば、この悔しさを今後の大きな糧にする力が既に備わっていると思います。今後の更なる成長に期待したいと思います。 同じく初出場の古畑については、当初過去の小林洋平選手のようにチームや美鈴湖自転車競技場の先輩・仲間達になかなか馴染めず浮いていた存在でした。しかし、洋平がJr.五輪を通じて大きく変わったように、古畑もまたJr.五輪という舞台を通じて一生懸命に課題に取り組み、周囲の大人たちに厳しく怒られながら指導されて行くなかで大きな成長を遂げ、自分のためだけで無く、不器用にもチームに一生懸命貢献をしようとしている姿は見る者の琴線に触れる今大会の隠れた名シーンだったと思います。
昨年の美鈴湖自転車学校で初めてスポーツ自転車の講習を受ける
【選出外の選手たちの成長】 このチームは出来得る限り子供から大人を切り離して、子供たち同士で話し合って決めるということに力を入れてきました。自転車はとかく親と子で競技をやっているケースが非常に多く、自転車会場へ行けば鼻持ちならない「小皇帝」たちが沢山いる。これがこのまま大きくなるから自転車をやっていた大人達もすべからく「社会性」が身についていない。それが現在の日本自転車界のまとまりの無さに直結しています。しかしながら、このチームの子たちは自転車という共通語を使ってだいぶコミュニケーションをとれるようになってきました。個人競技の中でも他者を思いやり、仲間のために一生懸命になれる今回出場していない選手たちのこともしっかりと書き加えておきたいと思います。
【VELOクラブの今後】
【あるを尽くして】 しかしながら、年々、子供たちは子供たち自身で話合い逞しくなってきています。指導者側もそんな子供たちの状況を可能な限り細かく把握しながら「あるを尽くして」指導を行えたと思っていますし、子供たちも困難な状況で「あるを尽くして」この1年自転車に取り組めたと思います。確かに、環境・設備・機材・もっと高い水準の教育と言い出したらキリが無いのですが、育成に携わる全ての者がいまあるベストを限りなく尽くせたと思っています。末筆になりますが、 今後もいまあるなかで各々がベストを尽くせるチームを目指して欲しいと思います。
2024長野県Jr.五輪代表チーム
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というわけで、今年の
Jr.オリンピックのレポートでした。
振り返ってみると、本当に長い1年でした。
個人的には
「せめて週1回は練習の機会を与えてやらないと…」
と思い半ば強引に練習を決行したのですが
この週1回の練習継続が
とんでも無い大きな負担でした。
そして、子供たちは機械では無く
間違いなく心を持っているし、生身の人間であり
怪我をする、病気をする、不調になる
問題を起こす…
流石に当初のように警察から電話がかかってきたり
学校から電話がかかってきたりすることは
無くなったのですが、県内各地の子供たちを
一律にマネージメントすることは
本当に至難の業だと思います。
それでも、本当にVELOクラブの子たちは
年を重ねるごとに、だいぶ逞しくなってきました。
もう親が何時までもつきっきりの小皇帝はおらず
物事を自分達で話合って決めることが出来る。
一つこのチームを象徴する
ストーリを記しますが
Jr.五輪の前々日、チームテントの設営準備をしたのですが
一昔まえなら、自分のことだけに忙しく
他人を見下し、自己中心的なふるまいをする者ばかりでした。
しかし今年のチームは
お互いに助け合い、いたわり合いながら
自分達のことを共同でやっていた。
その姿を見ていた保護者の方が
非常に印象的だったと感想を述べてくれました…
人生において、この時期に身に付けなければ
もうこの先ずっと身に付かないことや
今でしか学べないことを
しっかりと考え・学び成長してくれている
この子たちを誇りに思うし、彼らこそ
長野の自転車界を変えてくれる存在だと思っています。
最後になりますが…
皆さまの一年の御支援に
重ね重ね御礼を申し上げます。
どうか引き続き長野県の自転車少年・少女の育成に
御理解・御支援を頂きますよう
心よりお願い申し上げ、以上を
今年のJr.五輪のレポートとさせて頂きます。
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