もくじ
3月27日より松本市が「シェアサイクル事業」を開始。
夕方のテレビニュースで松本市が3月27日より「シェアサイクル」を開始、OpenStreet株式会社と共同事業で行うことを始めて知りました。恐らく県内のサイクリストでも「シェアサイクル」と「レンタサイクル」の違いを明確に答えられる人は少ないと思いますが、今回はこのシェアサイクルについて取り上げたいと思います。
シェアサイクルとは何か?
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、自分は海外に長く住んでいました。その時にある日突然、政府から「シェアサイクル始めます!」と云うお達しと共に、街のあちらこちらに海外では珍しい「日本風ママチャリ自転車」と駐輪場が現れました。確か宗主国のイギリスで大成功した?システムをその国でも取り入れたとか…。そんな話しも含めてお話しをして行きます。
シェアサイクルとは?
シェアサイクルは一般的に、公共の自転車を複数の人間で文字通りシェアしながら運用します。また運用時間も「ちょっとそこまで」程度の利用を主眼とされ、記憶が確かならば、その国でも数分から長くても半日程度が最も多い利用時間で、主に短時間利用が主流となっています。
レンタサイクルとの違いは?
日本の旧来のレンタサイクルと云うと、観光で滞在地を巡る乗り物と云うレジャー向けのイメージが強いと思いますが、シェアサイクルの場合、各国を見ても主に都市部での運用が主流で、利用者ターゲットもどちらかと言えばその土地に根付いた住民・学生・ビジネスマン等の「生活の足」としての運用が最も多いとされています。他には、レンタサイクルは借りたお店へ戻って返却しますが、シェアサイクルは地域に設けられた指定のサイクルステーションであれば、どこでも返却が可能なことが特徴です。また、シェアサイクルを導入する行政の思惑として、ラッシュアワー時の渋滞の緩和・CO2削減の環境的配慮・利用者の移動コストの削減等を標榜しています。
国内のシェアサイクルの状況
国内では各都市部を中心に、多くの地域で行政と民間の共同運営で運用が行われている。また、その際の民間業者だが、現在の所国内では主な6社が競合している。
・ドコモ・バイクシェア (横浜市・仙台市・広島市・新宿区・文京区等) ・HELLO CYCLING〔OpenStreet:ソフトバンクグループ〕(大阪府・兵庫県・さいたま市等) ・Mobike〔北京摩拜科技有限公司〕 (札幌市・福岡市・大磯町等) ・PiPPA〔オーシャンブルースマート〕(京都市・板橋区・北区・中野区等) ・ペダル〔株式会社ペダル〕(川越市・姫路市・金沢市・岡山市等) ・メルチャリ〔メルカリグループ〕(福岡市) |
などが挙げられます。現状では携帯電話会社や、中国系企業等も参入に意欲的です。それは、前者がスマホとの親和性(支払いや地図アプリとの連動)、後者が中国からのインバウンド旅行者を主軸にビジネス展開を行おうという意図を感じます。また、松本市はソフトバンク系列のHello Cyclingと連動します。
気になる移動コストの話し
現在大手のシェアサイクルの多くは、時間貸しをしており乗った時間によって料金が決まります。因みに松本市が始めるシェアサイクルの利用料金は15分辺り60円(1日最大1000円)とされています。利便性を考えると一概には比較出来ませんが、県内のタクシー初乗りが710円、タウンスニーカーが200円なので条件が揃えば利用したいツールかも知れません。
◇県内タクシー初乗り運賃: 最初の1.458km 710円 ◇タウンスニーカー(バス): 150円~200円 ◇シェアサイクル: 15分60円 1日 最大1000円 |
利用方法
現在、利用方法は殆どが「スマートフォン払い」もしくは「クレジットカード決済」。「ICカード」(Suica等)を現地でかざして利用する方法が殆どです。裏返すと現在のところスマホ・クレジットカード・ICカードを利用していない方は利用が難しい・出来ないのがネックとなっています。また、殆どの場合が事前にPCやスマホで利用登録が必要です。それを踏まえ次章で松本市の事業を紹介します。
都心でよく見かける赤いシェアサイクル。
松本シェアサイクル事業
ここでは、松本市が行うシェアサイクルの概要を見て行きたいと思います。本来は、主催する松本市が説明を民間に丸投げせず、もう少し解りやすくオープンに解説すべきだと思いますが… 当サイトでも少し概要を記載します。
松本市シェアサイクル事業
貸出・返却時間:0時から24時まで(場所によって異なる)
利用料金:15分あたり60円(1日最大1,000円)※繁忙期は異なる
貸出車種:電動アシスト自転車
支払い方法
・クレジットカード決済
・携帯キャリア決済(ソフトバンク・ドコモ・au)
・Yahoo!JAPANウォレット
お客様サポートHELLO CYCLING |
問い合わせ
建設部 交通安全・都市交通課
〒390-8620 長野県松本市丸の内3番7号(本庁舎5階)
電話:0263-34-3245 FAX:0263-34-3202
松本市シェアサイクルの利用方法。
松本市と共同運営するHELLO CYCLINGの利用法は、先ずスマホにアプリをインストールするところから開始します。その方法と、実際に現地でレンタルする方法の説明は以下の通りです。
両画像ともクリックすると大きくなります
現在の主な貸出・返却ステーション
・松本駅北自転車駐車場
・松本バスターミナル前
・松本駅お城口広場
・ホテルブエナビスタ
・信毎メディアガーデン
・松本市美術館
・イオンモール松本晴庭
・喫茶山雅
・松本城
・開智学校駐車場
・相沢病院
詳細Map(HELLO CYCLING公式)
サイクリング長野より
シェアサイクルについては、国際的に出始めた頃ちょうど海外に住んでいたので、創世記からここまでをその地域レベルで自分なりに把握しています。ところで皆さんは東京へ行った時にシェアサイクル利用しますか??自分は毎月1回程度は東京へ行きますが恥ずかしながら一度も利用したことがありません。ではなぜ利用しないか?理由は以下の通りです。
自分は東京でなぜ利用しないか?・使い方が全然わからない。 ・どこが運営していて、どこのブランド?を使えば良いか解らない。 ・行政が運営しているだけに、区を跨いだら管轄外? ・支払い方法が面倒くさそう ・調べてまで「乗りたい!」と思う魅力が無い。 ・大体どこにステーションがあるの? ・都心の交通量が多い所で自転車は危ない。 ・時間に迫られるビジネスでは、結局は使えない。 ・殆どの自転車に空気入って無いし、整備不良がある。 ・つまるところ都心では公共交通を使ったほうが便利で早い。 |
我ながら、シェアサイクルと云う物への理解も低ければ、伝わってくる情報量も凄く少ない。加えて言えばまだ未成熟な市場にも関わらず「利用したいなら勝手にネットで調べて使って!」と言った感じなので、事業者と利用したい人の溝が全く埋まらない…
さらにネガティブなイメージを言えば、「行政はとりあえず流行に乗って何かやってみます!民間はそれを利用して短期で儲けます!」で、世界共通でこの事業には熱を感じず、行政・民間共にビジョンが見えません。今のオートマチックなビジネスモデルの中では進歩的なロジックなのかも知れませんが、残念ながらこのままでは、この事業は終始この程度で終わるような気さえします。
昨年、昔し暮らしていた海外の都市に行った際に、確か2010年に始まったシェアサイクルのその後を見て来たのですが…。素人の自分でも解かるくらいに「整備が行き届いていない自転車」、「相変わらず使い勝手の悪いシステム」、「詳しくはインターネットでと書かれたパンフレット」…何も変わっていないどころか老朽化が目立ち始めています。まだ次の10年でどうなるか?解りませんが、残念ながらこれはもう、これ以上は自力での成長は望めません。そこで、ここまでの荒廃の理由をこう分析します。
自分が住んでいた国での問題点。・最も大切な「初期プロモーション」がそもそも大失敗! |
ボコボコに言ったのですが、裏を返せば!ここを改善すればシェアサイクルの未来が見えてくるような気がします。もしかすると最後の「ダサい!」を「カッコいい!」「オシャレ!」に変えるだけでだいぶ変わるのかも知れません。ただ、夕方ニュースでこの話題を初めて見て、色々と調べながらこの記事を書いていますが、ここまでの一連の経緯や現在閲覧できるプロモーションを見ていると、残念ながら松本市の現状の取組は御多分に漏れずと言った感じです。松本市がどんなビジョンでこの事業を起こし、今後どう育てて行くのか注視して行きたいと思います。
因みに知る限りですが、今後この分野にセブンイレブン等のコンビニ業者が参入し、コンビニでの貸借が可能になるかもしれないそうです。非常に面白く、ビジネスとしても様々な可能性が生まれる試みだと思っています。一方、今ふと考えて、自分が行政の立場であれば今以上に、市の公共施設で人のいるところ、例えば:公民館、体育館、図書館、博物館、等の公共施設にステーションを設けると共に、コスト等様々な問題もありますが、将来的には県内の大学や専門学校と連動すると放置自転車等の対策にも繋がるかな?とも思います。
松本市街地の道路を見ていて思うこと…
それと松本市に関して自転車でもう一つの提言があります。松本市は駅から松本城・信州大学周辺まで公道にしっかりとした自転車専用レーンがあります。これは市外の人間からみると非常に素晴らしいことで普段の生活道路としても長野県内の多くの市町村が見習うポイントだと思います。ただ、この自転車レーンが一つの仇となっている傾向があります。それは車を運転してみると解るのですが、松本市は市内の自転車右側通行がビックリするほど多いこと。ただでさえ城下町で道幅が狭いので市外の人間にとって松本市街地の運転は本当に気を使います。特に信州大学・病院の周辺で多く見受けられます。これは、一つにレーンに左側一方通行とのインフォメーションが少ないこと。そして、行政・警察の市民へ対する自転車安全への啓蒙が足りないものと推測します。シェアサイクル事業を機にこの辺りの基本的なことにもビジョンを持って取り組んで頂きたいと思います。
自分の住んでいた地域は最初の30分は無料。
30分~1時間は2ドル(約200円)それ以降は30分毎に5ドル。
サイクリスト達は、この自転車のことを
ANCHOR(アンカー:おもり)と揶揄していた。
英語圏でポカリスエットやBSアンカーが
売れない理由は(汗)や(錘)を連想させるから。
最後に…
今日は少し「モノ申す系」のようになってしまいましたが、自転車業界に身を置く人間として、こうした自治体の取組・民間の取組共に凄く重要視していて、自転車業界全体の浮沈に関わる重要なことだと思っています。競技・非競技問わずスポーツ自転車界に身を置く人間にとっても対岸の出来事では無く「我らがこと」として捉えて貰えればと思っています。
少し厳しい視点で長く書きましたが、不徳ながら自分はこの10年来、未だに移動手段としてのシェアサイクルの有用性を見いだせていません。これを機会に多くのサイクリストの方々に是非一度シェアサイクルに乗ってもらい、この分野への様々なアイディアや提案を頂いて、この分野が少しでも発展して行けばと切に願っています。
随分とネガティブに書いてしまいましたが
やはりこの分野の発展は、自転車界全体の
発展につながります。これを読んだ方が
様々なアイディアを持ち寄って
新しい方向性が生まれれば最良です。
そして、毎度ですが…
自転車の未来を創るのは
政治家の先生でも、お役人様でも無く
本当に自転車が好きな人が創って
行くものだと思っています。
この文章が誰かの考える糧に
なれば幸いです。
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