〔報告〕2019年「サイクルツーリズムセミナー」参加レポート《後編》

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

〔報告〕2019年「サイクルツーリズムセミナー」参加レポート《後編》

 

 前回のレポートに引き続き、2019年2月1日、文化庁で行われたサイクルツーリズムセミナーについて。今回は国交省および民間からルーツスポーツジャパン代表の講演内容をお伝えします。引き続き信州各地域の行政の方々自転車観光を考えておられる民間の方々、そして我ら長野県自転車業界の方々に目を通して頂き、新しい物を生み出す為の考える糧になればと思います。

 

 

サイクルツーリズムの推進について

 

講演者:大野 昌仁 国交省自転車活用推進本部事務局次長

 

 

・自転車活用推進法の概要
  ◇基本理念
  ◇責務
  ◇自転車活用推進計画
  ◇自転車の日・月間
    5月5日は自転車の日、5月は自転車月間

・自転車活用推進本部及び事務局について

・自転車の活用の推進に関する目標及び実施施策
 ◇自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成
 ◇サイクルスポーツの振興等による活力ある健康長寿社会の実現
 ◇サイクルツーリズムの推進による観光立国の実施
 ◇自転車事故の無い安全安心な社会の実施

・サイクルツーリズム推進の考え方
  自転車で特有の道路を走ることを楽しんだり、地域独自の
  資源や魅力を楽しむことを促すサイクルツーリズムの取組が効果的。
  その為に走行環境の確保拠点・受け入れ環境確保魅力づくり
   情報発信等を官民が連携しながら進める。

・サイクルツーリズム推進に関して講ずべき措置
  「ナショナルサイクルルート」の創設
 
・モデルルートによる取組の考え方
 ◇複数の市町村に跨がる等、広域的なルートであるか?
 ◇サイクリストを惹きつける魅力や、価値創造の素地があるか?
 ◇サイクリストの支援に向けて、地域の関係者の協力が得られるか?
 ※空港からのアクセスや道の駅を中心とした幹線ルートの整備や情報の整備

 ここまでの資料はこちら(国交省PDF) 

・走行環境確保
 ◇大規模自転車道により走行空間を確保
   つくば霞ヶ浦りんりんロード、浜名湖一周サイクリング(ハマイチ)
 ◇案内板等
  ならクル、ジャパンカップサイクルロードレース(宇都宮)
 ◇休息・整備スポット
  しまなみ海道(サイクルオアシス)、ビワイチ(サイクルステーション)

・受け入れ環境確保
 ◇拠点スポット-宿泊など-
  サンライズ糸山(今治市)、ONOMICHI U2(尾道市)

・魅力づくり
 ◇地域の魅力発掘
  SAKAI散走(堺市)、阿蘇サイクルツーリズム学校「コギタス」
 ◇組織・体制づくり
  一般社団法人しまなみジャパン、益田市サイクリスト誘客協力宣言企業登録制度

・情報発信
 ◇マップによる情報発信
  いしかわ里山・里海サイクリングロード、浜名湖一周サイクリングロード
 ◇SNSや動画配信等プロモーション
  前橋市自転車インスタグラム、つくば霞ヶ浦りんりんロードPR動画
  各地域の取組に関して詳しくはこちら(国交省PDF)

 

・海外におけるサイクルルート認定制度
  各国におけるサイクリングロードの認定条件について
  詳しくはこちら(国交省PDF)

・日本版ナショナルサイクルルート制度の考え方
  日本を代表し、世界に誇りうるサイクルルートを
  指定・PRするナショナルサイクルルートを創設する。  

・ナショナルサイクルルート選定における視点
 ◇ルート設定:景勝地を通過、多くの名所、域外からのアクセス性等
 ◇走行環境:沿線地域における自転車通行空間の整備状況 等
 ◇魅 力 :滞在時のコンテンツ、常設のツアーガイド 等
 ◇情報発信:ルートマップ、HP 等
 ◇受入環境:休憩所、サポート、交通結節点でのサービス 等
 ◇取組体制:官民によるサービス向上と継続的な取り組み体制を構築
  詳しくはこちら(国交省PDF)

 

 

ツールドニッポン -事例紹介と各調査結果の共有 –

 

講演者:中島 祥元 一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン 代表理事

 

・活動紹介 ツールドニッポンとは?
 「サイクリング×ツーリズム」日本にサイクルツーリズムを広げて行く
 サイクリストと地域を繋げるプラットフォーム

・活動実績
 2018年は17地域で開催、2万人参加 ※長野県は志賀高原ロングライド

・全国サイクルツーリズム連携推進協議会発足
 地域間相互連携などのため2017年発足

・サイクリスト国政調査について

 

出典:ツール・ド・ニッポン(一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン)

 

・サイクルツーリズムの現状

・各コンテンツについて
 ◇大型イベント
  温泉ライダーin加賀温泉郷、かすみがうらエンデューロ他
 ◇ロゲイニング(ランドハンターズ)
  レースでは無い新たなイベントのメリット
 ◇サイクリングガイド養成
  JCGA:サイクリングガイド協会監修のガイド養成
 ◇WEBコンテンツ・アプリ開発
  各種紹介と各メディア媒体のメリット・デメリット
 ◇インバウンドツアー
  海外サイクリスト誘致など…

 

 

パネルディスカッション

 

 各講演者のプレゼンテーション後は、有識者によるパネルディスカッションが行われた。その前に各パネリストから簡単な現在の活動報告や興味深い発表があったので紹介したい。

 

  参加パネリスト

  ・栗村修 (日本自転車普及協会)

  ・田代 恭崇(リンケージサイクリング株式会社)

  ・岡 朗 (岡ツアーズ株式会社)

  ・北村 和弘(飛騨市役所 商工観光部)

 

 

 田代 恭崇氏(リンケージサイクリング)活動報告

 ・リンケージサイクリング紹介

 ・JCGA日本サイクリングガイド協会について
  ◇JCAと共催で認定ガイドを育成。
   ・ガイド育成講座について 
   ・ガイド育成講座の活動について
    ※因みに講座受講料は1名22万円 長野県は1名しかいないそうなので興味のある方は是非!

 


 

 岡 朗氏 (岡ツアーズ株式会社)

 ・岡ツアーズ紹介(インバウンドサイクリングツアー)

 ・サイクリング市場の概況

 ・デスティネーションジャパンの潜在性
  魅力:変化に富んだ地形、良好な道路、治安の良さなど
  課題:交通量の多さ、英語対応力

 ・サイクリングツアーの種類

 ・付加価値の創出機会

 ・サイクリングツアー実施社の状況(国内外)

 ・国内サイクルツアー実施地域

 ・顧客の傾向について

 ・ツアー中に心掛けていること

 ・今後インバウンドツアーにおけるアプローチなど

 


 

 北村 和弘氏(飛騨市役所 商工観光部)

 ・サイクルツーリズムにおける岐阜県の特性

 ・西美濃でサイクルツーリズムを始めた理由
  ◇走りやすい道路
  ◇多様な景色を楽しめ、変化に富んだコース。
  ◇サイクルトレインの存在
  ◇関連団体・企業の存在

 ・飛騨での事例
  人口減少先進地で0⇒1を生み出す。
   駅がありアクセス良好
   地元の鮎の知名度が高い
   部屋数の多い広い家が多い(民泊)
   住民が元気
  シェアリングエコノミーによるまちづくり
   そのためにもう一度地元をリサーチ
   スキルと未利用空間のシェア

 ・飛騨市の宿泊者推移

 ・飛騨市の観光客の特徴について

 ・観光資源の掘り起こし
   まちづくり=観光資源開発=地域の誇りづくり

 ・新たな取り組み
  ◇レールマウンテンバイク
  ◇Eバイクツアー開始(民間)
  ◇里山サイクリング(民間)

 ・各種補助制度について
  各種補助金精度の種類
  小さな町づくり応援事業

 ・行政が取り組むべきこと
  ◇観光地域振興には行政の取組だけでは不十分
  ◇民間が積極的に取り組みやすい精度の構築と機運を高める
  ◇事業者と行政の事業の住み分けを…

 ・サイクルツーリズムの課題と期待
  サイクリングは有望なコンテンツながら、個々の地域の実状により
  その活用方法は異なるのではないだろうか?

 

パネルディスカッション

 

 

サイクリング長野より

 

 以上が今回のサイクルツーリズムセミナーのレポートになります。出来るだけ詳しく当日の内容をお伝えしました。自分も思う所が多々あったのですが、一先ず自分の意見は封印してコレを読む必要性がある県内の関係者の方にフラットにお伝え出来ればと思い記事にしました。遠く東京でのこと信州で情報共有して頂ければ幸いです。

 

さて今回参加の感想ですが…

 

サイクリング長野として参加する一方で、海外のスポーツイベント会社のバイヤーとしての視点で参加しました。もしどこかの自治体で魅力的なサイクルイベントや、サイクリングロードがあるならば!その場で商談を始めようかと考えていましたが、残念ながらマッチングタイムには参加自治体がゼロ。今までこうしたセミナーに数多く出てきましたがコレは初めての経験。民間もなかなか手探り状態でこの業界の未成熟度が伺えました。逆を言えば未開拓のこの業界はこれからどんどん成長して行くのだろうと潜在性も感じるのですが、買い物に行ってモノが売って無いことが少しばかり残念でした。少なくとも県内には出展すべき地域な無かったか?次回以降に期待します…

 

また、この会議が終わった後、とある行政の方に尋ねられました。「行政は何をすべきだと思いますか?」。突然で何と答えて良いのか迷いましたが、やはり「国はより血肉の通った明確なビジョンを示す」。これに尽きるのでは無いでしょうか?リーダーがどれだけ熱のある言葉で明確なビジョンを語れるか?今回色々な話しを聞いてみて、インテリジェンスの高さと諸々の努力は解るのですが、イマイチ自分には伝わりません。国や地域社会の為に何かやってやる!!という熱い気持ちになることも無かった。会場を後にする人を少し観察していましたが、恐らく多くの人が同じ思いだったかも知れません。 共に歩もう!と思えるビジョンと、その為にもう少し物言いを…

加えてもう一つ、お上に進言するなら、長野県の春先のレースでありがちな問題。雪が降ったけど、市としては雪かきをしたいけど、そこは県道だから・国道だから手を出せない!と云うような所謂「お役所仕事」を我々民草は嫌います。それぞれの立場は重々承知ですが、お役人同士の横の繋がりを密にして頂ければ幸いと思います。

 

最後に、我々信州自転車界の次代を担う若い皆さんに…

 

大会やイベントをやる上で、地域の理解・行政の力添え無くしては出来ません。しかし、行政に頼り過ぎても立ち行きません。再三言っていますが、県自転車の未来を創るのは県連の先輩方でも、政治家の先生方でも、行政のお役人方でもありません。自転車の未来は自転車を好きな人達が創って行くと云うことを忘れないで下さい。

最後になりますが、今回の主催者・後援の各団体の皆様とご尽力頂いた皆々様に、こうした機会を頂いたことを心より御礼申し上げます。自転車界においてこうしたイベントが今後増えて行くことを心より願っています。

 

 

関連LINK

(財)ルーツスポーツジャパン〔主催〕

ツールドニッポン

スポーツ庁

文化庁(会場)

国土交通省

リンケージサイクリング

岡ツアーズ

飛騨市役所 商工観光部観光課